[画像のクリックで拡大表示]

三つのタイプに分けて品質を定義

 ここまで挙げてきたように,これから新しく提案されるロボットに対し品質をどのように考えればよいかを,ロボットに求められる機能から次の三つに分けて探っていく。

(1)非自律型ロボット
(2)タスク自律型ロボット
(3)完全自律型ロボット

 第1の非自律型ロボットは,ロボットへの指令が明示的に行われ,その指示に忠実に従うロボットである。産業用ロボットや介護補助ロボットなどがこれに相当する。ロボットへの指令のしやすさ,指令に対する忠実度が非自律型ロボットの品質となる。

 第2のタスク自律型ロボットでは,ロボットへの指示は抽象的になり,明示的に指令するとは限らない。ロボットは様々なセンサを使いユーザーが求めることを認識し,それを達成するための計画をたてて,実行することが求められる。計画実行中に状況が変化した場合には,再計画し目的を達成するような柔軟なシステムが求められる。お手伝いロボットなどがこれにあたる。

 第3の完全自律型ロボットでは,ロボットに指示する事はなく,「人を楽しませる」というような究極的な目的のみ持つ。コミュニケーションロボットがこれにあたる。このロボットは様々な角度から品質を考える必要がある。「人を楽しませる」というような主観的にならざるを得ないことは,アンケートやSD(semantic differential)法などで客観的に評価する必要がある。

安全確保の考え方はがらりと変わる

 従来のロボットに対する安全性に関しての基本的な考え方は,できるだけロボットと人間を離すことで安全性を確保しようとしている。空間的,時間的にロボットの活動領域に人が入り込まないようにすることであり,ロボットに囲いを設け,人が囲いに入るときはロボットを稼働させないようにするための装置によってロボットの活動領域と人を分離することで,安全を確保している。

 次世代ロボットでは,そもそも人とロボットが協調して仕事を進めることで,新たな価値を生みだそうとしている。ロボットの活動領域に人が存在することが前提となっているため,いままでと違った,人とロボットが共存している環境での安全確保の方法が求められてる。特に,医療介護といった分野では人命にかかわる,信頼性,安全性が特に重要になってくる。

 経産省は2007年に「次世代ロボット安全性確保ガイドライン」を取りまとめた(Tech-On!関連記事)。ここでは,設計,製造,輸入,設置,管理,修理,販売及び使用の各段階において安全性確保のための基本的な考え方が述べられている。

 最後になるが,ロボット技術はまだ黎明期であり,今後おおいに発展が期待される分野であるといえる。ロボットは様々な技術と統合化技術の産物であり,それぞれの要素技術はますます細分化され,それぞれの分野で発展している。それらを大域的な視点から,有機的に統合化させることが求められてきている。

著者紹介

花形 理(はながた おさむ)
金沢工業大学高信頼ものづくり専攻専任教授(知的ロボット領域担当)
ソニー 総合研究所,デジタルクリーチャーズラボラトリを経て,2007年より金沢工業大学大学院工学研究科教授。
ソニーでは,人工知能,ニューラルネットワーク,ロボットの研究に従事。 エンターテインメントロボット「AIBO」の開発,1999年にAIBOの商品化,その後二足歩行ロボット「QRIO」の研究開発に携わった。金沢工業大学に移り,東京虎ノ門キャンパスにある社会人向けの大学院高信頼ものづくり専攻では,2008年の4月より「知的ロボット」領域を新規に開講した(http://www.kanazawa-it.ac.jp/tokyo/mono/index.html)。

参考文献
1)井上 博允他,岩波講座,「ロボット学」全7巻,岩波書店,2004-2006.
2)土井 利忠他,「脳・身体性・ロボット 知能の創発をめざして」,シュプリンガーフェアラーク東京,2005.
3)AIBO Official Site
4)ASIMO Official Site
5)知能ロボティクス研究所
6)wakamaru.net [ワカマル]
7)NEC Robot Research & Development
8)アンドロイド研究 : アンドロイドサイエンス | 知能ロボット学研究室(石黒研究室)
9)PARO[パロ]人の心を豊かにするメンタルコミットロボット
10)CYBERDYNE
11)「次世代ロボット安全性確保ガイドライン」のとりまとめについて