彼は、そんなことを星空をあおいで言った。20年間も走り続けてきた中高年は、いまさらながら第2の人生へ向けてリブートする。思い残したことはまだまだあると言わんばかりに「わたくし、やり残し人生の完全燃焼へラストスパートしちゃいます」時代が来ているのかもしれない。

 仕事、結婚、子育てと酸いも辛いも味わってようやく生きるすべを知った団塊世代だが、気づけば財力も体力もそこそこにある。であれば、残された時間をもう一度好きなようにやってみようという気になるのは当然なのではないだろうか。話しかけてくださった方が、「あの夢をもう一度」と最終恋愛に踏み切られる心境も十分にわかるのだ。

 2番目の桜は新宿御苑だった。小生の両親は米寿を超えているのだが「さすがにもうだめ、だからどこか旅行に連れていけ」と小生の顔を見るたびに連呼する。そう言い続けて何年も経つのだがお迎えが来る気配すらない。

 今年は「なぁお前、いよいよ今年で最後だ、花見は新宿御苑でカツ丼を食いたい」とのリクエストだったので、大混雑の中、車いすをえっちらおっちら押して花見をした。大きな桜の木の下に陣を構えると、親父は満開の桜を見上げて「もうこれで思い残すことはない」と言った。これも毎年のことで、同じ発言を10年以上繰り返している。本人の思いはどうあれ、高齢者は長寿で信じられないほど元気なのだ。

 桜の園を見渡すと、そこここに高齢者組宴会を見かける。あと数年もすると花見会場は元気な高齢者でいっぱいになるのだろうなぁと想像を巡らす。きっとそこは「残された人生をどう派手に遊びまくっているか自慢大会」の開催会場と化すであろう。

 「おらぁーこれから結婚すんだ、どうだいいだろー、ウッキウキだぜベイビー」「へーだ、あたしなんざ先月ハワイにアバンチュールだよ、むふふ」「おれなんざフルマラソン5時間切ったぞ、できっかよお前に、ヘヘヘーン」「マラソンなんて甘い甘い、オレなんかエベレストに登っちゃったもんね」・・・そんな様子が目に浮かぶ。