実用を優先する技術を実とすると、仮説や理論を優先する科学は虚と位置付けられる。技術と科学は互いに影響し合って、お互いを豊かにする。同様の虚実関係はあらゆる所に見られる。現実の課題解決に関わる政治や経済の諸活動を実とするなら、理想に関わる宗教や芸術、哲学や思想は虚である。現実を軽視し理想ばかりを語る人は困り者だが、現実の成果だけを追う人生は寂しい。実業者・実学者のための実情報サイトTech-On!において、記者という虚業者として虚について書き連ねてみたい。
谷島宣之の「虚實の谷間に花が咲く」
実用を優先する技術を実とすると、仮説や理論を優先する科学は虚と位置付けられる。技術と科学は互いに影響し合って、お互いを豊かにする。同様の虚実関係はあらゆる所に見られる。現実の課題解決に関わる政治や経済の諸活動を実とするなら、理想に関わる宗教や芸術、哲学や思想は虚である。現実を軽視し理想ばかりを語る人は困り者だが、現実の成果だけを追う人生は寂しい。実業者・実学者のための実情報サイトTech-On!において、記者という虚業者として虚について書き連ねてみたい。
目次
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偽装五輪開会式を批判する偽善
運動神経が鈍いせいかどうか、スポーツは何もしないし、テレビ観賞にも関心が無い。北京五輪も高校野球もまったくと言ってよいほど観なかった。こうしたスポーツの大きな催しがあると新聞は連日大きく報道するので「読む所が減った」と思ってしまう。
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『戦艦大和ノ最期』から我々は進歩したか
今回のコラムの主旨は『戦艦大和ノ最期』(吉田満著、講談社学芸文庫)をTech-On!読者の皆様に紹介することである。同書を未読の方はぜひ読んで頂きたい。既読の方は改めて同書の内容を思い出し、戦艦大和の栄光と悲惨、そして現在の日本の諸状況に思いを巡らして頂きたい。
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現場重視と“方法論”重視の対立
「理想と現実、あるいは創造と管理が両立しにくいことは分かりますが、経験と方法論は両立するのではないでしょうか。経験から方法論を抽出し、その方法論を用いながら経験をさらに積むわけですから」。先日、ある大学院大学で講演した際、学生の一人から冒頭の質問を受けた。
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俳優の心得、記者の心得、そして技術者の心得
書きたい題材を記録しておく頁が筆者の手帳にはある。いくつかの雑誌やWebサイトの仕事を掛け持ちしているため、媒体ごとに頁を用意しておき、「この話は日経ビジネス向き、あの話は日経コンピュータ向き」と思いついた時、忘れないようにそれぞれの頁に書いておく。今回はTech-On!向け題材の筆頭にあった「技…
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新聞社会面の消滅を75年前に予測した寺田寅彦の慧眼と見込み違い
物理学者の寺田寅彦は1933年1月、「将来に於ける新聞は最早社会欄なるものの大部分を喪失して居る」と予測した。その根拠は動画像メディアの出現であった。寺田は「広い意味でのニュース映画によつて、人間は全く新しい認識の器官を獲たと云つても甚しい過言ではない」と動画像メディアを高く評価したが75年後の今…
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専門誌の記者は専門分野の素人でよいか?
ひょんな切っ掛けからTech-On!に短文を書くようになって、3年あまり経ったが、今回から『虚実の谷間に花が咲く』と題して連載を始めることになった。妙な題名の意図は趣旨文に書いた通りである。実業実学の世界におられるTech-On!読者の方にとって面白い「虚学虚業の話」をあれこれ書いていきたいと思う…