「ISOを取得しなければ輸入禁止」としたEUラウンドの苦い思い出から、日本企業はこぞって低炭素経営に方向転換しようとする。けど、準備が間に合わないから手っ取り早く専門のサービス会社に依頼することになるだろう。ところが信頼のおける炭素経営技術コンサル業者を国内で探しても、なかなか見つからない。結局は経験豊富な外資か、国内にこだわれば泥縄式に立ち上げたプチコンサルタントに任せるしかなくなるのである。その状況を見越して、いまから日本企業向けに、低炭素経営の技術やノウハウを保有したサービス会社を起業すべきか。先手必勝である。

 酔った勢いで、このアイデアを改革派官僚氏にぶつけてみた。

 「これはチャンスだ。考えてみろよ、ルールが変われば我々を猛追しているBRICSの勢いも止まる。新ルールに適応できる国が主導権を握るわけだから。じゃあ、誰が新ルールに適応できるのか。そりゃあ、日本だろう。だってさ、低炭素経済では新技術を駆使してものを作らなきゃならないわけで、従来の化石燃料に頼った生産技術はもう役に立たなくなるわけだ。つまりは、これまで低コストで生産できた国が後退し、高度な技術を駆使して低炭素で生産できる国が隆盛するってことだろうし・・・」

 ここからいよいよ起業案のご披露というところで、官僚氏はネクタイを緩めながらこう言った。

 「ご名答、まさにそれが狙いでもあるんだな。教えてやるからおまえしばらく黙ってろよ、いいか、政府主導で大手企業が動く親方日の丸体制では間に合わん、海外からのルール改正に対応しようにもそんなに簡単に企業体質を改善できるわけがない。多少闇っぽいが腕は抜群に立つブラックジャックみたいなスーパードクターにご登場願ってガラっとルール改正してしまう。日本企業はまだまだ一枚岩だから、一旦変えるとなると世界一変わり身は早い。小回りの効く革新的な技術ノウハウを持つプロジェクトを結成して低炭素経営に強い外資サービス企業と手を組めば、雑作もないだろう。それに乗じて、BRICsに奪われつつある市場権を奪還する。そのチャンスは十分にあるはずだ」