もう,光ディスクはいらない。

CD,MD,そしてDVDと隆盛を極める光ディスク。 しかし,次世代には大きな壁が立ちはだかる。 ハード・ディスク装置,ディジタル放送,ネットワーク。 これらを組み合わせれば光ディスクのいらない世界を築ける。 次世代光ディスクは,その前に市場に登場し普及できるのか。 技術はそろいつつある。しかし,規格はまだ決まっていない。 混沌としたなかで,次世代光ディスクは製品化に向け走り始めた。

 CD,MDはすでに定着した。DVDプレーヤの出荷台数は年率300%に迫る勢いで伸び,書き換え可能なDVDディスクを使った録画機も1999年末から続々と登場してきた。この次を担う光ディスクの提案も相次いでいる。容量は片面で20Gバイト以上。当初から書き換え可能なディスクを使った録画機が登場しそうだ。順風満帆,光ディスクの明るい将来は約束されているかにみえる。

 ところがそうでもない。ハード・ディスク装置(HDD)を使ったレコーダ(HDDレコーダ)が次世代レコーダの本命として急浮上してきたのだ。アクセス時間は光ディスク装置のおよそ1/10,書き込み速度は10倍以上。録画しながら再生する機能をやすやすとこなす。容量も次世代光ディスクの3枚分にあたる75Gバイト品がすでに市場に登場している。大量のデータを一元管理でき,所望のコンテンツを瞬時に呼び出せる。レコーダとしての使い勝手を比べれば,光ディスクはHDDの敵ではない。

 それは以前からわかっていた。ただし,HDDの容量単価からいってHDDレコーダの普及は当分先との見方が,これまでは支配的だった。ところが,この問題は急速に解消しつつある。HDDの記録密度が年率100%という信じられない速度で上昇しているのだ。この勢いは当面,増しこそすれ衰えることはないだろう。2002年ころには100Gバイトを超えるHDDが1万円以下になっているかもしれない。

 こうなれば,HDDレコーダの普及は一気に進む。そして,残された弱点もやがて解消されていく。その弱点とは,パッケージ媒体が再生できないという問題である。

 現状では,HDDレコーダで「見たい映画をすぐに見る」といった要求を満たすことは難しい。これが,遠からず可能になる。広く普及したHDDレコーダに向け,ディジタル放送などを使って直接コンテンツを配信すればよいのだ。ユーザの好みに応じて多種多様のコンテンツをあらかじめ配信しておく方法で,疑似的なビデオ・オン・デマンドは実現できる。広帯域ネットワークが整備されれば,完全なオン・デマンドも実現可能になる。

 決して夢物語ではない。英国や米国では2000年後半から,日本でも早ければ2001年にもHDD内蔵のディジタル放送受信機が登場し,「蓄積型データ放送サービス」が始まる。将来は,ディジタル放送受信機の大半にHDDが内蔵されていることになりそうだ。  こうした世界が現実のものとなったとき,ユーザは口をそろえて言うだろう。「もう光ディスクはいらない」と。

ただ一つの解は早期の投入と普及