残る案件も多い

 ただし注意すべきなのは再生専用媒体規格の実用化でHD DVDがBlu-ray Discに先行すると決まったわけではない点だ。HD DVD-ROM規格の中で承認を受けたのは,物理フォーマットのみ(正式版に近い0.9版)。再生専用媒体や対応プレーヤを製品化するには,論理フォーマットや映像符号化方式,著作権保護技術を固めてDVD Forumで順次承認を得る必要がある(図3)。


図3 すぐに製品化できるわけではない
今回承認されたのは再生専用HD DVD規格「HD DVD―ROM」(仮称)の物理フォーマット規格のみである。パッケージ媒体を製品化するには,論理フォーマットや著作権保護技術などを固める必要があ る。これらは2004年半ばの策定を目指しているようだ。書き換え可能な媒体規格「HD DVD―ARW」(仮称)については,物理フォーマット規格はまだ承認を得られておらず,論理フォーマット規格の承認なども必要になる。

 東芝やNECとしては今回の逆転劇をきっかけに,残りの規格も一気にまとめ上げたいところだ注1)。再生専用媒体に必要な全規格を半年程度で完成させたいと考えているようだ注2)。

 停滞していたHDTV映像の符号化方式の選定も進みそうだ。これまでは候補に挙がる複数方式のうちH.264のライセンス体系が固まらず,幹事会での採決は見送られてきた。しかし,2003年11月にライセンス体系が明確になったことから,2004年2月の幹事会で議題となる見込みである。

 書き換え可能な媒体規格を優先して策定したBlu-ray Disc陣営も急ピッチで再生専用媒体規格「BD-ROM」を策定している。物理フォーマット規格は既に0.9版にあり,ハリウッドと意見交換しながら論理フォーマットや著作権保護技術の策定も進めている。2004年夏には正式規格の1.0版を発行する予定だ。

 このまま互いに譲らず,もし市場で2つの規格のパッケージ媒体が並立するとどうなるのか。結局は両媒体を再生可能な互換機が求められることになる。こうした互換機を実現するための技術的な負担を抱え込むのは,AV機器メーカーである。