2008年は地球温暖化で年が明けた。新聞、テレビなど多くのメディアが特集を組み、ブームの様相さえ示し始めた。欧米に比べ遅きに失した感はあるが、何事にも良いことを始めるのに遅すぎることはない。このブームが本当の温暖化対策に繋がればこんなに良いことはないのだが。

 もう一つ、温暖化と共にメディアを賑わせたのが「日本沈没論」であったように思われる。「いまや日本は国中が閉塞感に覆われている」、「世界はダイナミックに成長や変化を続けるのに日本はどっぷりと停滞しきっている」、「このままでは、ゆでカエル同様日本は沈没しかねない」といった諦観にも似た深い憂慮感が漂い始めたようである。では、本当に日本は勢いを失い、やがて沈没していくのか。最近の新聞紙からで拾った「数字」を挙げながら総括してみたい。

1.名目GDP

 06年の一人当たりのGDPはなんと18位。93年には世界一だったのが嘘のようである。ここ30年間の日本の順位の上下をグラフ化すると見事に山型となっている。つまり、過去30年の間に日本はピークを打ち、終わってみれば30年前の順位に逆戻りしたのである。

 一人当たりの順位と同じ軌跡を描くのが世界のGDPに占める日本のシェアである。06年のシェアは9.1%と24年ぶりに世界の10%を割ってしまった。94年のピークの半分だそうである。

 国別では依然第2位であるが、その地位も今や風前の灯火である。あの中国が猛烈なスピードで追いかけてきており間もなく第3位に転落するのは間違いない。世界史を振り返れば、ほんの一瞬だけ輝いて消えていった国がたくさんある。日本はその轍を踏んでいくのだろうか。

2.ODA

 貧すれば鈍す。ODAの拠出額で日本は91年から連続10年世界一であった。アジアを中心に気前の良い兄貴分として途上国の支援を続けてきた日本だが、今では国内財政難を受けて徐々に後退、06年は3位に転落。OECDの試算によれば、10年までにその地位はさらに下がり6位まで落ち込むそうだ。米国、独、英、仏、伊。そしてやっと日本の順番になるという。欧州勢とて決して財政に余裕があるわけではない。それにもかかわらずODAの意味をしっかり捉え、苦しい中でこそ絶やさず続けるから意味が増すわけであり、こぞって増額させているのは立派である。

 ODA予算の国民総所得に占める割合も日本は06年に0.25%、10年には0.21%まで低下する見込みだ。日本外交においてお金が全てとは言わないまでも、国際貢献、人道支援などから見てもこのままでは日本の発言力低下は目に見えている。

3.人口動態

 60年後には英国にも逆転されるとは。英国の人口は現在、約6000万人。日本の約1億3000万人の半分しかない。それがわずか半世紀で逆転されるそうだ。その背景には急ピッチで進む移民の受け入れと高安定の出生率にある。66年には8100万人まで増加するという。一方、日本は長期出生率が1.26に止まり、しかも移民も受け入れない。早くも2046年には1億人を割り、やがて2065年には8000万人をも下回るという。この人口動態の数位をグラフ化しても、前述のGDP同様、見事な山を描く。つまり100年の間にピークを打ち、元の鞘に戻ってしまうのである。

 人口は経済成長力の源である。国の活力の源泉なのである。その人口が長期低落を続けるのは大きな問題だ。少子化だけではない。高齢化も一層進み人口動態は極めて深刻な問題だ。注意すべきは、世界の人口は逆に爆発的に増加するのである。この見事なまでの対照。深刻化する貧困問題、難民や移民問題には我関せずを決め込むなど、海外の問題には目もくれずひたすら国内だけで生きていこうとするこの姿勢。世界を見渡す視点はどこに行ってしまったのだろうか。「もう『一億xxxだ』という表現も使えなくなってしまう」などと言っている場合ではないはずだが。