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HDDの大容量化技術編(後編)・競合が多い熱アシスト記録

2008/01/15 09:00
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 今回は前回に引き続き,HDDの大容量化に関する技術の競争力について分析する。前回では,HDDの大容量化に対してどの企業が競争力を持っているかなど,全体的な傾向について分析した。今回は,個別の技術に着目して,技術力を検証していく。

 分析にはこれまでと同様に,公開されている特許情報をもとにして,特許を保有する企業の技術的な競争力を測る指標であるPCI(Patent Competency Index)を利用する。PCIとは,SBIインテクストラが独自に開発したもので,各特許の注目度などを被引用数や情報提供数などのリアクション数により計測し,個々の特許の質を数値化した指標である。

図1
●図1 「パターンドメディア」および「熱アシスト記録」に関する特許の企業別件数シェア

 前回,HDDの大容量化を実現する上で,カギを握るのは媒体の高密度化と再生ヘッドの高感度化の二つの技術だと述べた。図1は,媒体の高密度化を実現するための技術として,今後有望だと思われる,「パターンドメディア」および「熱アシスト記録」のそれぞれについて,特許の出願件数のシェアを見たもの。両技術ともに東芝,日立の出願件数シェアが大きいのが分かる。一方,TDKはパターンドメディアについて出願件数シェアが大きいものの,熱アシスト記録についてはシェアが小さい。

 この,パターンドメディアと熱アシスト記録はいずれも技術開発が最近であり,出願件数も近年に集中している。このため,外からの注目度などで指標を作るPCI分析を行っても,あまり差が出ない。そこで,PCI分析は実施しなかった。

図2
●図2 特許の引用相関図

 図2は,各技術の中でも比較的PCI値が高かった技術の特許出願についての,サイテーションマップ(引用相関図)を示したもの。左はパターンドメディアに関するTDKの特許(2007年12月12日現在出願係属中)を分析したもの。4件の後願特許出願にて審査官引用(青線)をされ,4件の後願特許出願にて拒絶理由通知引用(赤線)されている。このことから,後願排除効を有した特許技術であることが分かる。このように、本件特許発明の同一・類似技術を競業他社が開発しており,その他社技術を排除するような本件特許発明は特許の価値が高いもの(弊社指標であるPCI値が高い)と考えられる。

 一方で右は,熱アシスト記録に関する東芝の特許を分析したもの。TDKの特許ほどではないにしても,後願排除効を有しているのが確認できる。

図3
●図3 パターンドメディア,熱アシストのそれぞれに関する企業別の特許出願件数推移

 図3はパターンドメディアと熱アシスト記録のそれぞれに関して,企業別に特許出願件数の推移を見たもの。両技術を比較すると,熱アシスト記録の方が出願件数が多く,また競合企業が海外も含めて多い状況にあることが分かる。

図4
●図4 TMRヘッドに関する特許の登録件数シェアとPCIシェア

 図4は,再生ヘッドの高感度技術として,すでに現行の製品にも搭載されている「TMRヘッド」に関する特許の出願件数シェアとPCIシェアを示したもの。両シェアともに,TDKがトップであり,この分野で圧倒的な強さを持っているのが分かる。

 図には表れてこないが,TDKは共同出願(東芝,新科實業有限公司)も積極的に行っており,各社が優位なヘッド技術をもつTDKと組む動向が把握できる。その他,ヘッドウェイ・テクノロジーズ,アルプス電気のHDD用ヘッド事業を買収したことでヘッド技術・事業が強化され,また富士通とはヘッド事業に関して業務提携を行っている。

図5
●図5 企業別に見たTMRヘッドに関する特許の出願件数とPCI獲得の推移

 図5は,TMRヘッド技術に関する企業別推移の推移。TDKは近年になっても,出願件数をさらに伸ばしているのが分かる。これらの要因を鑑みると,今後もTDKを中心としてヘッドの新技術が展開がされていきそうである。


    今回の分析条件

    【分析対象】→ハード・ディスク装置(HDD)
    1985年以降に出願された日本公開特許公報を対象に,発明の名称や要約中に,「ディスクリートトラック」(106件),「パターンドメディア」(39件),「熱アシスト」(89件),「CPP型GMRヘッド」(60件)及び「TMRヘッド」(222件)のキーワードを含む(同義語も含む)特許を抽出し,分析対象とした。
    図中の項目のうち,富士通グループとして山形富士通を,富士電機として富士電機デバイステクノロジー,富士電機ホールディングスを,キヤノンとしてキヤノンアネルバを,日立グループとしてヒタチグローバルストレージテクノロジーズ,ヒタチグローバルストレージテクノロジーズネザーランドビーブイ,日立プリンティングソリューションズ,日立マクセルを,TDKとしてヘッドウェイテクノロジーズを含むものとする。

    【本分析に利用したPCI指標】
    全分析対象特許に対し,「他社からの注目度を示すPCI指標項目」に100%のウェイト付けを行なって各特許のPCI値を算出した後,特許のステータスにより以下のパーセンテージをかけて算出した。
    登録特許:100%,審査請求済み特許:50%,公開済み特許:30%,消滅特許:0%


川崎昌義=SBIインテクストラ コンサルタント・コンサルティング部長
土屋 亮=同社・コンサルタント・理学博士

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