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末吉竹二郎の『エコビズテック論』

技術はあるのに、置いていかれる日本

  • 末吉竹二郎=国連環境計画・金融イ二シアテイブ 特別顧問
  • 2007/11/21 14:55
  • 1/2ページ

 「自動車の排ガスに含まれるCO2を大気汚染物質と見なす」との歴史的判決が出たのは、2007年4月、早春の米国ワシントンにおいてであった。この訴訟はマサチューセッツ、カリフォルニアなど12の州政府とニューヨーク市など四つの地方自治体、それに13の保護団体が原告となり、米国連邦政府の環境保護庁(United States Environmental Protection Agency:EPA)に対し自動車が出す排ガスに含まれるCO2を規制すべきだとの訴えたのである。

 これに対し被告たるEPAは、このCO2は大気汚染物質ではなく、米大気浄化法(Clean Air Act:CAA)の規制対象に含まれないと反論したのだが、判決は大気汚染物質であることは明白だとした。判事の一人は判決後「気候変動がもたらす被害は深刻であり、そのことはよく認識されているところだ」と述べている。これは連邦最高裁判所が地球温暖化に関して初めて出した判決であったが、表決は9人の判事の中で5対4という最小差であった。

僅差の意味

 米国の歴史を振り返ると連邦最高裁判所での1票差の判決がその後の米国の社会を大きく変えた例がいくつもある。時の流れと共に社会の中心にある価値観は少しずつ変化する。やがてそれが沸騰点に達しようとするとき、社会の意見は大きく二分される。これまでの意見が大勢を占める中で新しい意見が力を得てくると、その勢力図の均衡が破れる瞬間、つまりその分水嶺での判決は大きな差にはならない。

 わずかの差で新しい価値観が古い価値観を凌駕していく。今まさにその歴史の転換点にあるのだろう。この判決で投じられた1票も、恐らくこれまでの歴史を変えた1票と同じく、米国の、そして世界の温暖化対策を大きく転換させることは間違いないだろう。

 実は、自動車からの排ガスに含まれるCO2が米国において大気汚染物質と認定されたのはこれが初めてではない。2002年、自動車王国であるカリフォルニア州が、州法で「そうだ」と決めてしまったのである。それに対し、GM, フォード、クライスラー、トヨタ自動車、ホンダ、日産自動車はカリフォルニア州を相手取り、「州にはそのような権限はない」との訴訟を起こしたのである。

 ところが2007年9月、バーモント州の連邦地裁において「州にはその権限がある」との判決が出された。連邦裁判所ではもう「自動車からの排ガスに含まれるCO2は大気汚染物質」との判断は定着したと見るべきであろう。2007年11月初旬、カリフォルニア州は自らが制定した2002年排ガス規制法の実施に必要なEPAの許可が遅れていることに業を煮やし、連邦政府を相手取って早く許可を出すようワシントンDCの連邦地裁に訴えを起こした。連邦政府がこれら一連の判決にどう反応するのかだが、選択肢は限られている状況ではなかろうか。

裁判所は知の集積場?

 温暖化を巡る裁判は無論これだけではない。有名な訴訟は電力会社を相手取って行なわれている。2004年、ニューヨーク州など八つの地方自治体は、米国のトップから5番目までの電力会社を相手に温室効果ガスの削減を求めて連邦裁判所に訴訟を起こした。いわく「温暖化は既に始まり、州民の生命、健康、自然、経済、そして子どもの将来にとって脅威となっている。州政府の義務は州民の保護にある。連邦公害法に基づきその原因の除去を求めるのは我々の義務である」と。なんとカッコいいことか。日本にはここまで市民保護に徹した行動をとれる公僕が、果たしているのだろうか。

 この裁判の第1審は却下であった。なんと裁判所が、この案件はあまりにも政治的過ぎるとして判断を避けたのである。これに対し原告側は直ちに控訴した。ちなみにこの訴訟を起こしたときのニューヨーク州の検事総長は現ニューヨーク州知事のエリオット・スピッツァー氏である。

 米国は、よく訴訟大国と呼ばれる。何ごともすぐ裁判で決着…(次のページへ

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