自動車業界全体の好調ぶりは皆さんご案内の通りだと思います。しかし手放しで喜べないのは、国内市場での売り上げが伸び悩んでいる点でしょうか。特に将来の市場を担うべき若者のクルマ離れが進んでいることが業界に暗い影を落としているのです。特に都会でこの傾向が顕著なのだとか。「周囲の若者はみなクルマ好き」という環境で育った私のような中年世代には、とても違和感のある話ですが。

 まず、この話が本当なのかを調べてみました。下図は、社団法人日本自動車工業会が調査した「乗用車市場動向調査」のデータを基に一部加工したもので、年齢層別に自動車の非保有率を調査し約10年間の変遷を追いかけたものです。

 年齢が上がるに従って自動車の保有率は上がってきます。これは経済的な問題でしょう。30歳を越えるころから以後は、年代に関係なく同じような振舞いを示しています。一方で、ここ10年間、明らかに若年層の保有率が下がりつつある結果がはっきり見て取れます。1997年ごろから29歳以下の層が低下し始め、2001年以降は24歳以下の最も若い層まで下降し始めました。

 ただ、若い人に共通の話かというと、そうでもないようです。男性を尻目に24歳以下の女性では保有率が上がってきているのです。まさに自動車とは「女性や子供の乗り物へと変化しつつある」とこのデータは語っています。「若者のクルマ離れ」ではなく、若い男性のクルマ離れ現象が進行しているというのが正確な表現のようです。

 なぜ、若い男性が自動車を買わなくなってきているのでしょう? 関係者の話をうかがったり、その手の調査・分析本を読んでみたりしたところ、実にいろいろな理由付けがなされていました。それらを大ざっぱに整理すると、以下の6つくらいにまとめられるようです。

  • (1)不景気が続いたり所得格差が拡大したりした結果、クルマが買えなく、あるいは買い替えられなくなった
  • (2)携帯電話、ファッション、パソコン、カラオケなどへの出費の優先度が高くなり、相対的にクルマに充てる予算が減った
  • (3)車両の耐久性が上がり、故障も少なくなったので買い替えを控え、長く乗れるようになった
  • (4)中古車や小型車の性能が良くなったので、普通車の新車には乗り換えなくなった
  • (5)似たようなデザインの車やパーツが増えたので、買い替えるほどの魅力を感じなくなった
  • (6)技術が高度化していじる余地が減り、面白くなくなった

 この(1)~(6)の順番は、理由として強い順というのではなく、私が恣意的に並べたものです。(1)に近いほど「欲しいけど余裕がない、しかたがない」といったもので、番号が下るに従って「買い替える気になるほどの動機付けが減った」という感じの理由になるものです。つまり、(1)に近いほど切実な理由で、後者ほど贅沢な理由。こうして並べてみると、昔に比べれば自動車の価格はお手頃になってきているはずですが、それにもかかわらず「買えないのではなく買わない人」が増えているのではと感じます。

 この中で、私が特に気になったのが(5)と(6)です。これらが、自動車自体の魅力が落ちてきていることを示唆しているからです。世の中にモノやサービスが溢れて、自動車以外にも楽しいことがいっぱいあるから、というような相対的な地位の低下ではなく、自動車側の都合として勝手に自分の魅力が下がっているという「におい」がしませんか。

 男の子を主人公として解釈すると、(5)の似たようなデザインが理由の場合には、「オレらしさをアピールできるほどの尖ったクルマがないんだよね」となり、(6)のいじる余地低下の場合には「オレ風に改造したり、故障をさっと修理したりするのがカッコイイはずだったのに」となると考えるのです。

 若い男性にとって「どうしたら女性にもてるか」ということは…(次のページへ