お薦めトピック
- AD -
コラム

勝手に考える三洋電機再生計画

2006/12/13 12:25
アイキットソリューションズ 生島大嗣
はてなブックマーク
Facebookでシェアする
Twitterでつぶやく
印刷用ページ

 このところ三洋電機に関する報道が新聞を賑わしている。12月7日、NTTドコモが三菱電機製の携帯電話端末に使う電池パックを回収すると発表したが、不具合の原因は三洋電機の子会社が供給したリチウムイオン電池であったという。

 これに先立つ2カ月の間にも、目に留まった新聞記事だけで次のようなものがあった。

  • 11/25・三洋電機 2200人削減 今期最終赤字500億円
  • 11/23・三洋、主力の携帯売却へ 中計、1年で見直し
  • 10/26・三洋 冷蔵庫の生産委託 ハイアールにタイ工場譲渡
  • 10/21・三洋 収益回復なお不透明 携帯デジカメ競争激化
  • 10/21・三洋 国内営業を分社 子会社と統合 コスト圧縮

 どうして三洋電機だけがここまでダメになったのだろうか?

 作れば売れた右肩上がりの時代に、他の家電メーカーと同等の性能だが、より売価の安いものを作るOEM企業として三洋電機は成功した。もっと言えば「松下(電器産業)はこうしている」という言い方が社内で説得力を持つ体質があった。こうした成功体験から時代が変わっても抜けきれなかった。

 今や、安いだけの製品は中国を筆頭に海外から怒涛のように入ってくる。電機製品のコモディティー化が進行している中で、以前のビジネスモデルに固執せざるを得なかったところに問題の根がある。90年代後半に全世界のシェアの3分の2を占めたデジタルカメラ事業もOEMを中心とする戦略を変えないままだったので、台湾などのOEM企業にコスト競争で破れてしまった。

 携帯電話事業は、三洋が大きなパイプを持っていた米国携帯電話会社のスプリントがネクステルと合併しスプリント・ネクステルとなったことが災いした。モトローラとのパイプがあるネクステル側が主導権を握ってしまったのだ。これは青天の霹靂という側面があったが、事業が好調のときに次の事業を、それも他社の真似ではなくオリジナルな事業を育てるという企業文化が無かったことが大きい。

 技術力の問題ではない。技術力は充分だったと思う。ブランドを大切に育てることをせず、中核となる製品や事業のアイデアやコンセプトを創造できなかったことが大きい。創業家をはじめとする会社トップとその周辺が絶対的な権力を持ち、周りをイエスマンで固めてしまう構造が改められない限り、新事業に繋がるアイデアやコンセプトが自由に生まれ討議される風土は育たない。だが、今や、尖がった企業しか生きていけない世の中なのである。

 現在、三洋電機は外資系の銀行等の支援を受けて再建の途上にある。携帯電話事業を売却するかどうか揺れているようだが、これまでの総合メーカーの看板は下ろさざるを得ないだろう。といって、不採算部門を整理していくリストラ手法、外科的な治療だけでは限界がある。次代を担う中核部門を育てないまま事業を縮小していけば、存続すら危うくなりかねない。

 事業を絞り込む際には、三洋電機が持つ優れた蓄積、尖がった技術を活かすべきだ。有力候補の一つは、電池事業である。「三洋電機ではなく三洋電池」というのは冗談ではなく、可能性のある生き残り策と言える。20年以上前に、今はタイコ社に買収されたレイケム社のポリスイッチを用いた過剰電流遮断回路を全金属リチウム電池に内蔵するなど、三洋電機は真面目な工夫を重ねてきた。こうした技術面の蓄積は、リチウムイオン電池にも引き継がれている。今回の電池回収問題は痛手だが、技術まで無くなったわけではない。

 ただし、電池など優れた技術を持つ事業に絞り込んだだけではダメだ。その技術を事業価値の創造に結び付けないといけない。尖がった製品、独自の事業につながるアイデアやコンセプトを生み出すためには、ものが言える自由な風土を時間をかけて育てるしかない。

 どうすればこの風土を育て定着することができるのだろうか。三洋電機復活のために三つの提言を述べてみたい。リストラや事業再編といった短期的、外科的な提言ではない。次代に向けて、新しい事業コンセプト、製品やサービスコンセプトを自ら生み出し、OEM中心で他社並みを至上命題としてブランド構築を二の次としてきた昔の成功パターンから抜け出す内科的な改革の提言である。

1.アイデアを生み出しコンセプトを自ら創造する。
2.このコンセプトを基に具体的な事業戦略を立てる。
3.戦略を実行するための自立的かつ自律的な仕組みを持った実務部隊を作る。

 特に、アイデアとコンセプト作りが要となる。上からの強制ではなく、一番仕事に精通して業務を回している最前線のミドル層から自発的に要員を確保する。矛盾しているようだが、トップダウンで要員を指名したり、自ら参画しようという者を掘り起こしていく必要がある。そうして、自発的に自ら事業アイデアを出し、コンセプトを作り上げる風土の礎とするのだ。

 アイデア出しにあたっては、経験者のファシリテーションの下で思考を自由に発散させ、これらを基にコンセプトを作り上げていく。市場データやマーケティングリサーチに頼らず、いままでの経験からにじみ出てくるアイデアを拾い上げる方向で時間をかけて討議することが肝要である。

 アイデアが形だけにとどまったり、花火で終わるような事態は絶対に避けなければならない。社内の反対勢力を排除し、自らが今後の三洋電機を築いていくという成功体験を植えつけるのである。これには、トップの強力なイニシアティブが必要となる。生半可な覚悟では、社内の反対勢力を勢いづかせてしまうし、失敗体験を植えつけることになる。

 次に事業戦略作りだが、アイデア出しの核となった者を中心に残し、広く社内からメンバーを募るとよい。ここで必要となるのは、部署ごとの利害を超えた全体最適の戦略を築き上げる具体的な仕組みだ。これ抜きでは絵に描いた餅になってしまう。

 3番目の実務部隊をおくにあたっては、過去に成功した自律かつ自立的に動ける仕組みを取り入れる方法がよいかも知れない。例えば、京セラのアメーバ経営などである。

 三つの施策を進める際に、一番肝心なのは社員に自ら参画し成功したという実体験を持たせることである。これがじわじわと内科的に組織の風土、モチベーションを改善していく。下を向いていた社員が顔を上げ、胸を張って笑顔で歩く気風を生み出していく。

 人間の場合、病気の治療には、病気になるに要した時間の倍以上の時間がかかると言われている。企業の場合も、外科的治療と併せて息の長い内科的手法を用いることが、長い目で見ると一番近道なのである。

著者紹介

生島大嗣(いくしま かずし) アイキットソリューションズ代表
大手電機メーカーで映像機器などの研究開発、情報システムに関する企画や開発に取り組み、様々な経験を積んだ後、独立。既存企業、ベンチャーのビジネスモデルと技術の評価、技術戦略と経営に関するコンサルティング、講演などに携わる。現在は、イノベーション戦略プロデューサーとして活動している。生島ブログ「日々雑感」も連載中。執筆しているコラムのバックナンバーはこちら

本稿は、技術経営メールにも掲載しています。技術経営メールは、イノベーションのための技術経営戦略誌『日経ビズテック』プロジェクトの一環で配信されています。

とても参考になった 0
まあ参考になった 0
ならなかった 0
 投票総数:0
コメントに関する諸注意
(必ずお読みください)



コメントの掲載は編集部がマニュアルで行っておりますので、即時には反映されません。しばらくお待ちください。
記事中に誤りなど,編集部へのご連絡にはフッターのご意見/ご感想・お問い合わせをお使いください。
English
中文