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コラム

ソニーは本当にダメなのか?

2006/10/30 19:44
アイキットソリューションズ 生島大嗣
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 イノベーションを求める声が高まっている中、日本の代表的なイノベーターであったソニーの低空飛行が続いている。経営陣を変え、なんとか復調してきたところに、電池トラブルが発生、パソコン・メーカーがソニーを訴えるという報道もされている。10月24日にソニーは、原因を説明する会見を開き、ノート・パソコン用のリチウムイオン電池セルを使用した電池パックを交換するプログラムを全世界で始めるとした。一方で、これまでソニーを利益面で支えてきたゲーム事業が不調と言われている。これは、製品の世代交代と携帯型の販売不振が重なったためだが、とにかく今のソニーにいい点がないかのようだ。

 マスメディアは誉めるときは一斉に誉め、けなすときは一斉にけなす。今はソニーを叩く時期なのだろう。そこで、あえてソニーらしい点はないかと探してみた。

 まだビジネスとして成功していないようだが、「ロケーションフリー」はソニーらしい製品ではないだろうか。ロケーションフリーはソニーの登録商標になっているが、放送コンテンツをインターネット経由で転送し、視聴する仕組みのことである。ソニーは6年前の2000年に、無線LANを用いたワイヤレステレビ「エアボード」を発売した。その後これを進化させ、家庭内に設置したベースサーバーに受信・蓄積した放送コンテンツを外出先で視聴できるロケーションフリー製品を2004年に発表し、その後も機能を強化して製品群を作り上げている。

 最近のようにディジタル技術が進みインターネットが普及すると、様々なコンテンツの作成と配信が多様な手段で行われるようになってくる。このため、以前は棲み分けができていた放送と通信の垣根が消えつつある。これに伴い、いろいろなビジネスチャンスが生まれ、軋轢も生じている。ソニーはこの変化をチャンスととらえ、ロケーションフリー製品を生み出した。

 少し前、竹中大臣が主宰していた通信・放送の在り方に関する懇談会は、テレビ番組のインターネット配信に関して出演者の事前許諾を不要とする法改正を提案した。しかし、文化庁の審議会はこの措置を、放送と同じ時間帯にインターネットで流す番組に限定する方針を明らかにしている。すべての番組に適用されるようになるまでには、まだまだ時間がかかりそうだ。

 ロケーションフリーは、テレビのインターネット放送がなかなか進展しないことを逆手に取ったビジネスと言える。転送しているだけだが、利用者にとっては「見たいテレビ番組を見たい時に見たい場所で見られる」ことになるからだ。

 ソニーはこれらの技術を応用した様々な機器を継続して生み出している。この分野では他社の後追いではない。自社のHDD内蔵DVDレコーダーとプレイステーションポータブル、ロケーションフリー用ベースサーバーとソニーエリクソンの携帯電話などの組み合わせでも、ロケーションフリー機能を実現している。さらに他社に対して技術供与も開始している。加賀電子はこれを受けて、アップルのマッキントッシュでも視聴可能なソフトウェアを開発すると発表している。

 ソニーの技術に頼らず、独自にソニーを追うベンチャー企業も登場している。米国カリフォルニア州のベンチャー企業スリングメディアは7月から、テレビ番組をインターネットに転送し視聴する専用機器を販売した。ノバックという日本のベンチャーは、スカイプを使用して出先でテレビを視聴するためのチューナーを発売している。

 ここで特記したいのは、ソニーのような大企業が何年も前からロケーションフリーのような新しいアイデアに基づき、技術と製品群を着実に世に送り出しており、それをベンチャーが後追いしている、という点だ。

 マスメディアが指摘してきたように、ソニーの製品戦略は一時期、相当にブレていた。MP3に対応しない音楽プレーヤを作りiPodに市場を席巻されてしまったり、DVDレコーダーではコンセプトは似ているものの規格が微妙に違う製品を、関連する事業部の数だけ登場させた。液晶などの薄型テレビへの急激な移行から目をそらし、平面ブラウン管に固執していた時期もあった。

 このような時期と比べると、電池やゲームの問題はあるものの、最近になって製品戦略のブレは小さくなってきていると思う。マーケットをドライブする大きな要素としての技術と、それを有効に使う戦略がブレなく機能し始めると、ソニーというブランドが再び、力を発揮するのではないだろうか。

著者紹介

生島大嗣(いくしま かずし) アイキットソリューションズ代表
大手電機メーカーで映像機器などの研究開発、情報システムに関する企画や開発に取り組み、様々な経験を積んだ後、独立。既存企業、ベンチャーのビジネスモデルと技術の評価、技術戦略と経営に関するコンサルティング、講演などに携わる。現在は、イノベーション戦略プロデューサーとして活動している。生島ブログ「日々雑感」も連載中。執筆しているコラムのバックナンバーはこちら

本稿は、技術経営メールにも掲載しています。技術経営メールは、イノベーションのための技術経営戦略誌『日経ビズテック』プロジェクトの一環で配信されています。

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