【御堀直嗣のテクニカル・インプレッション】トヨタ・オーリス:新開発プラットフォーム、走行感覚には違和感
これまで「カローラ」の2ボックス車として存在した「カローラランクス/アレックス」に代わって登場したのが、新型車の「オーリス」である。トヨタが欧州に投入するクルマの名は「Yaris」や「Avensis」のように末尾に「is」が付くのが共通点だが、オーリス(AURIS)も、その慣例に従っている。
![]() 図1◎トヨタ「オーリス」 |
このことからも明らかなように、オーリスは、欧州の「Volkswagen」や「Peugeot」といった走りの良さに定評がある2ボックス車を競合車種に設定して開発された新型車である。とくに高速での安定性を確保するには広いトレッドが欠かせないとして新開発プラットフォームの3ナンバー車体を採用し、5ナンバーサイズにこだわった国内向けカローラとは一線を画した。新プラットフォームのベースとなるのは、「エスティマ」や「RAV4」だが、開発者によれば、要素として共通部分はあっても、プラットフォームやシャシーとしては専用開発であるとのことである。
エンジンは、国内カローラと同じ1.8Lと1.5Lで、これにCVTが組み合わされるのも同じ。一方欧州向けには当然ディーゼルエンジンが用意され、変速機も手動が標準となる。インテリアは、競合する欧州車に比べてドライバー中心のデザインで、運転の楽しさを表現したと言えばそうだろうが、どこか狭苦しい印象もなくはない。
それは、大きく傾斜したフロントウィンドーによりフロントピラーがこちらに迫ってくる車体構造にも関係しているだろう。ただし、斜め前方の視界確保に多大な努力が払われたことは確かで、斜め前方の三角窓は開口部を広く確保しており、十分その機能を果たしている。その一つを取り上げてみても、開発陣が真摯に開発に取り組んだ姿勢がうかがえる。
![]() 図2◎インパネ |
開発テーマは「直感性能」であり、「5メートルインプレッション」をキーワードに手がけられたとのこと。確かに運転を始めてすぐ、他車と違う感触を味わった。直感性能と、5メートルインプレッションに偽りはない。だが、その感触は好ましいものではなかった。
開発の狙い通り、高速での操縦安定性はかなり高い水準に達していると思われる。だが、クルマの動きそのものに不自然さがある。ゆっくりとした速度で試乗会場を後にするときから、すでに眩暈(めまい)を起こさせるような感覚を与えた。
ドライバーが観客席に座り、目前の画面で走行シーンの映像が流されるように、運転操作の手ごたえと、目の前のフロントウィンドー越しに展開される景色の流れが分離されているのだ。実際、そのようなことが起きているはずもないが、目にそのように映る違和感がある。これは、助手席に座っていても同じで、同乗者がクルマ酔いを起こすほどだ。
この、見た目と乗車した感覚のズレは、後席に座ると直る。クルマの走りと、流れる景色が一体となって目に映るように変わるのである。こうした違和感は、市街地から高速道路、そしてワインディングロードに入っても基本的に変わらない。ただ、運転しているうちに少し慣れてくるのと、試乗したクルマでは、1.8L車より1.5L車のほうに、その印象は強かった。
この症状を運動性能開発担当の技術者に説明すると、1.8Lエンジン車は、車両重量が増えるため電動パワーステアリングのモータ出力を上げており、これによってパワーステアリングの補助力に余力が生まれる分、よりきめ細かく制御しており、症状が軽減されるのではないかとの推測だった。それが理由であるのかどうかはわからないが、いずれにしても、多かれ少なかれ、どちらのエンジンでも共通の不自然な感触はある。
後日、より長い距離をオーリスの1.8L車で走ることができた。そこでも基本的に上記の症状は変わりなく、さらに、高速で走行中、横風の影響を強く受けること、また、路面が変化すると姿勢が安定しないことも分かった。舗装されたばかりのきれいな路面では、競合を圧倒する操縦安定性を発揮するのに違いない。だが、一般の道路や高速道路は、常に路面状況が変化している。そういう道で、サスペンションストロークを活かして、余計な入力をいなしながら安定性を保つほどには、まだ足回りが仕上がっていないようだ。
同じことが同社の「レクサスLS460」にもいえる。きれいに舗装された路面を走る分には相当に高い水準の走りを見せるが、路面がうねったり荒れたりすると、速度を落としたくなる。ゆとりを失うのだ。オーリスも、横風や、路面のうねりに出会うと、ゆとりがなくなる。
たしかに、従来とは比較にならない高い速度域での操縦安定性が向上しているのは分かる。だが、温室育ちでは、市販車としてユーザーに自信を持って提供できる性能とはいえない。たとえドイツのニュルブルクリンクで走り込んだとしても、またそこが過酷な場であるにしても、それは一つの温室でしかないことを知るべきだ。あえていえば、ニュルブルクリンクを走り込むより、一般の道を走り込む方がよい。そうしてでき上がったクルマは、いつも安心して運転できる。日本車の辛さは、開発中に公道を走り込めないことにもある。
オーリス登場を受け、改めて欧州の競合車に乗る機会があった。その懐の深さは、高速道路を走行するまでもなく、ドライバーに安心を与えた。そしてその安心感は、運転を始めて間もなく実感されたのである。結果的に、直感性能を備えていることになる。直感性能にこだわり、5メートルインプレッションにばかり気をとられていると、肝心の根っこを見失いはしないか。逆に、根本を見逃しさえしなければ、そのクルマは動き出した瞬間に、間違いない性能を実感できるものである。
![]() 図3◎1.5Lエンジン | ![]() 図4◎1.8Lエンジン |
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