• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

HOMEスキルアップマネジメント谷島宣之の「さよなら技術馬鹿」 > 「人と違うことをする」のは万人の義務~ダイソン本人に聞く「how to do a Dyson」その3

谷島宣之の「さよなら技術馬鹿」

「人と違うことをする」のは万人の義務~ダイソン本人に聞く「how to do a Dyson」その3

  • 谷島宣之=日経コンピュータ副編集長、日経ビジネス編集委員、ビズテックプロジェクト担当
  • 2006/04/11 11:25
  • 1/1ページ

 英国の掃除機メーカー、ダイソン社の創業者兼会長、ジェームズ・ダイソン氏が語る「how to do a Dyson」の第3回目をお届けする。我ながらきりがないので、「ダイソンする」については今回で締めくくりとしたい。

 「ダイソンする(doing a Dyson)」とは、自分の発明を自分でデザイン(設計)し、開発・製造して市場を開拓し、売っていくこと(designing, engineering, manufacturing, marketing and selling one's own invention)である。同氏の自伝『against the odds』(邦訳『逆風野郎!』の中に、この言葉が登場する。

 第1回目には、「ダイソンする」という言葉の説明をするとともに、「ビジネスという言葉は嫌いだが、マネジメントは重要」と語る同氏の発言を紹介した。第2回は、エンジニアがセールスを手がける意義を語ってもらった。今回は、独創性のある製品をデザインすることについての回答である。

 第1回目でお伝えしたように、ダイソン氏はマネジメントについて次のように語ってくれた。

「マネジメントは人々に一緒に仕事をしてもらい、しかも同じ哲学を持ってもらうために必要だ。僕らの場合、その哲学とは、多くの人々に使ってもらえる、いい製品を作るということ。哲学を貫くためにマネジメントは必要だが、あくまでもマネジメントはデザインに奉仕するものだ」。

 とはいえマネジメントは時に、「管理」と訳される。マネジャと言えば管理職である。管理職と書くと、現場の技術者の活動を監視し、「売れるものを作れ」「絶対に品質を落とすな」「コストは下げろ」「残業しないで早く帰れ。帰らなくても帰ったことにしろ」と次々に注文をつける人が想起される。

 マネジメントと独創性のある製品を作ることは矛盾しないのか。ダイソン氏にその点を尋ねた。

「技術者たちを同じ哲学のもとに結集させるためにマネジメントは必要とのことですが、それと個々の技術者が独自性を発揮することとは矛盾しませんか」

「違った存在になる(to be different)ことは万人の義務と思う。ところが、教育やある種のマネジメントは、人々を同一のことをする従順な存在にしようとする。そのほうが管理しやすいからね。ただし、企業において、それはいい考えではない。テクノロジーがものすごく速く動く今日にあっては、テクノロジーをうまく使いこなす企業だけが生き残る。となると人々に、違ったことを考えてもらい、創造的になってもらい、ライバルと違ったことをすることが重要になってくる」

 いい製品を作って多くの人をハッピーにする。この哲学を共有するためのマネジメントはするものの、それとダイソン社員が創造的な活動をすることとはなんら矛盾しないというわけである。ちなみに「テクノロジーをうまく使いこなす企業だけが生き残る」と訳したところの発言は、「only technology-driven companies will survive」である。この「何々ドリブン」というのは日本語にしづらい表現で、直訳すると技術駆動型企業となるが、何のことか分からない。技術志向の企業、技術にこだわる企業ということである。

 この言葉が出てきたので「日本のテクノロジードリブンカンパニーのクリエイティビティをどう見ているか」と聞いてみた。「僕のフィールド(掃除機)についてしか言えないが」と前置きした上で、ダイソン氏はかなり長くコメントしてくれた。実に淡々と話していたのだが、後で録音テープを聞き返してみると、極めて激しい内容であった。

 いわく、掃除機のフィールドについて言えば、競合他社にはなんのクリエイティビティも感じない。したがって彼らをテクノロジードリブンカンパニーとは呼べない。ダイソン社と違って、彼らは掃除機が好きではないのだろう。掃除機を愛し、ハイパフォーマンスのマシンを作ろうという熱狂がまるで感じられない。中には、アイデアをコピーし、R&D投資を削り、他社より安い製品を出すメーカーがあるが軽蔑する、といった具合である。

 実際のインタビューでは、競合他社の実名をたくさん挙げて、ダイソン氏は以上のように語っていた。文字にすると口角泡を飛ばして力んでいるように感じるが、繰り返しておくと、以上の意見を物静かに、むしろ寂しそうにダイソン氏は語っていた。

 ここで競合他社の名前をなぜ伏せたかというと、他社は他社なりに意見があるだろうと考えたからだ。機会があれば、国産掃除機メーカーの意見を聞いてみたいと思っている。掃除機に熱狂するダイソン氏のような技術馬鹿に会えるだろうか。

 インタビューに戻る。国産メーカーについて厳しく批判されてしまったので、自虐的になり「日本のテクノロジードリブンカンパニーに創造性はないのか」と愚問を発してしまった。ダイソン氏の回答は次の通りである。

 「いや、そんなことはない。ソニーについては尊敬している。彼らはテクノロジー・イノベータだったから。イノベーティブな製品を次々に作ってきた。ただ、新しいテクノロジーを創造して市場に出すにはすごく時間がかる。それでも彼らがルーツに戻ることを期待している。ダイソンの製品が将来も成功し続けられるかどうかは、ひとえにいいテクノロジーの創造にかかっている。これは非常に長期思考(long-term thinking)が必要で、今時はやらないかもしれない。でも現代において、新しいテクノロジーを長期思考で考えていくことがなによりも重要と思っている」。

■技術経営メールのご案内
技術経営戦略誌「日経ビズテック」は、「テクノロジーから新しいビジネスを創造する」をテーマにした、技術経営メールマガジンを発行しています。内容やお申し込みにつきましては、こちらをご覧下さい。

●コラム名を「さよなら技術馬鹿」とした理由(トップ・ページへ)

おすすめ