キヤノンもリサイクル・アシストも正々堂々と勝負しませんか
特許という単語からいつも筆者が連想してしまうのは,技術に法律が絡み合って難解極まりない内容なのだろうということ。『日経ものづくり』4月号の特報「インクカートリッジ訴訟,キヤノン勝訴の死角」では,この特許にリサイクルまでが加わり,技術,法律,環境の3要素から論議されているため,さらに難解極まりなく映ってしまった。
特報の要旨は,キヤノン製のインク・ジェット・プリンタのインクカートリッジを,中国で再充填して日本で再販していた業者(リサイクル・アシスト)を,製造元(キヤノン)が特許侵害を理由に差し止めた裁判で,東京地方裁判所の判決が知的財産高等裁判所で覆り,製造元が逆転勝訴したというもの。本裁判の焦点である特許「インク吸収体」や,判決理由となる「消尽の例外」などは誌面を読んでいただきたい。
ここで,キヤノンとリサイクル・アシスト双方の主張を読み取れば「特許侵害の阻止」VS「リサイクル事業の存続」の構図になる訳だ。ただ,これらの主張はあくまで表向きであり,本当の争点は別にあると筆者は考えている。結論から言えば,今回の真の争点は,ビジネスモデルの独占か,ビジネスモデルへの参入か,である。
ご存知のように,「プリンタを売って,消耗品で稼ぐ」というプリンタ業界に特徴的なビジネスモデルがある。このモデルは消耗品を独占販売することで,より大きな旨みが得られる。しかし,近年の経費削減に環境問題が後押しし,複写機のトナーカートリッジなどに関しては市場にリサイクル品が出回り,この独占販売が崩れつつある。
話を戻して,今回の裁判の主役であるインク・ジェット・プリンタのインクカートリッジだが,これもトナーカートリッジと同じ時流に位置付けられる製品であるかと言えば,答えはNoだ。理由は簡単で,主たる市場が異なるからである。トナーカートリッジは企業を対象とした市場が主戦場であり,そしてキヤノンはリサイクル事業を既に確立しているが,インクカートリッジはエンドユーザーを対象とした市場が販売の中心であり,未だ未開の地である。つまり今回の訴訟の真意は,エンドユーザーの市場に対しては「引き続きこのビジネスモデルを死守します」とキヤノンが宣言したのだと,筆者には映るのである。
とどのつまり,リサイクル・アシスト側はこれらの市場環境の違いを認識せず,参入障壁はないものと読み違えてインクカートリッジのリサイクルへ参入した。しかしキヤノン側から見れば,リサイクル・アシストは自社のビジネスモデルにフリーライド(ただ乗り)し,利潤を奪った無法者であったのだ。その結果が特許侵害という訴訟となって現れたのである。
ビジネスモデルを独占したいキヤノンと,参入したいリサイクル・アシスト。この両者が,真の争点ではない特許とリサイクルによって,自己の正当性を主張するため,結果,双方の言い分がかみ合わないように映るのだ。
とは言え,特許侵害という視点では,一旦,知的財産高等裁判所で結論が示されたのであるから,そろそろ双方で共存の道を探る時期に来たのではないだろうか。普通に考えれば,製品の付属である消耗品を製造するリサイクル・アシストの立場は限りなく弱い。リサイクル・アシストが小手先だけの回避策を実施し,大きくビジネスモデルを変えないとしたら,今後もいつ何時,特許侵害として訴えられるか分からない。リサイクル・アシストは何らかの回避策を打たない限り,彼らのリサイクルビジネスは成立しない。
一方,消費者は目に見える形での環境活動を求めている。その点,リサイクル品は,キヤノンがインクカートリッジのリサイクル方法として提唱している「セメント材料の燃料や材料への使用」と比較して,より消費者が効果を実感できるのは疑いようがないこと。キヤノンはこの点に関して,消費者に何らかの方向性を示す必要があるはずだ。
そこで,特許を順守した上で,リサイクルを推進する共存ビジネスモデルとして「認定されたサードパーティー消耗品」という考え方を提唱したい。今回の例でいえば,リサイクル・アシストは特許使用料を支払う。対価としてキヤノンは補修部品の認定を行う。もちろん,認定は一定の品質基準を満たすことを前提としている。これにより,第3者によるビジネスモデルのただ乗りを防ぎ,不用意な製品トラブルも未然に防ぐのだ。
製品の特許を持つキヤノン自らが独占的なビジネススキームを開放することを前提に,このリサイクルスキームを,トナーだけではなく,インクを含めた多くの消耗品で展開する。ビジネスモデルのただ乗りさえ阻止できれば,必ず妥協点は見いだせると確信している。
これによって,誰よりもメリットを得るのは消費者でなくてはならない。消耗品を多様化させる。そして画質,安心,保証,環境,ブランドなど自らの価値判断にあったインクカートリッジを,消費者が選択できる環境を提供することこそが,顧客への貢献にほかならない。
キヤノンはビジネスの門戸を開き,リサイクル・アシストは正々堂々と参加する。いかがだろうか,この日本式リサイクルスキームのアイデアは。
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■インクジェットカートリッジの純正品の価格は,常識的に言って,かなり高価格と思います。プリンタメーカーは,「研究開発費,リサイクル費用等でかなりのコストがかかっている」と言う言い分ですが,額面通りには受け取れません。
事実,私の友人でもインクジェットプリンタを大量に利用している人は,リサイクル品を使用しており,品質にも満足している人が多いです。もし,低価格の(といっても驚くほどの安さではないのですが)リサイクル品が入手出来ないとなると,かなりの問題になってくると思います。
インクカートリッジも,言ってみればコピー用紙と同じ消耗品に分類されるわけですから,規格を一定にして,広く開放するのが本来の姿だと思います。例えば,フィルムカメラ用のフィルムでも,カメラの技術革新に関わらず,規格は統一してあり,ユーザーのメリットは大きいものであったと思います。結局は,寡占市場になってしまいましたが。
文の主意であると思われる両者の歩み寄りについては,純正,リサイクル品共に,競合の激化により大幅な価格低下に見舞われる可能性が大きく,両者に利益的なメリットが期待できない現状では,かなり困難な道のように見えます。といっても,本文の指摘は,大変,正しい方向だと思いますので,この基本線に沿って解決を模索することがベストのように思うのですが。
妥当な価格で購入できるというユーザーのメリット,環境面への配慮等を考えると,プリンタメーカーはリサイクルを阻止するという方針を,いくら特許問題があるとはいえ,今後も正面に掲げるわけには行かなくなるのではないでしょうか?
■文中で「ビジネスモデルの独占」が本来の目的であり,「特許侵害の阻止」はその名目であるとされています。しかし,そのビジネスモデル自体が特許取得の対象になり得るように,両者は本音と建前のような使い分けが出来るものではなく,より一致したものに近いと考えます。つまり,キヤノンの「ビジネスモデル」が正当であるかを問うて,消耗品の流通の自由(販売店の価格決定権を含む)と商品選択肢を広げることが,真の消費者メリットではないでしょうか。
製造原価の高いプリンターを安く売り,製造原価の安いインクを高く売る「ビジネスモデル」を消費者が支持するのか,それとも,それぞれをコストに見合った価格で販売し,各分野ごとに投資の回収を図るか。
現在の状態が是正されない限り,そこを突く互換(リサイクル含む)品が生まれる環境は続き,カートリッジ構造に関する特許を侵害しなければ,互換品ビジネスも立派なビジネスモデルとして成立します。そういう意味では,空容器のリサイクル行為が,個人レベルなら可で産業レベルなら不可という理屈も,消費者には理解出来ないでしょう。
「自己責任において互換品と純正品を使い分け,その性能の違いやコストと用途を勘案してその選択を判断する」。この行為に異論のある人はいないだろうし,基本構造の特許侵害が無い限り,プリンターメーカーは瑣末な論理で消費者の選択を妨げることをしない方が,結果的には支持を得ると思います。
■記者の見る目は,まことに正しい。特許権はただの手段であり,キヤノンの守りたいのは,ビジネスモデルである。それも,死守するつもりである。
企業の第一目的は利益追求である。環境保全が目的ではない。従って,キヤノンはサードパーティの参入は許さないだろう。競争相手はエプソン等の同業者であり,同業他社がインクカートリッジ等の価格競争に入らない限り,高値を維持しようとする。
リサイクル・アシストの残されたビジネスモデルは,インクのみの販売であり,オリジナルと同じものではなく,わざと違う色,オリジナルに無い色(金色とか銀色,その他)のものを出すことではないだろうか。それらのインクを使うための専用のプリンタドライバー等は,無料で配ればよい。
■これはあくまで特許侵害の有無が問題のはず。
しかし,記者は,
「これもトナーカートリッジと同じ時流に位置付けられる製品であるかと言えば,答えはNoだ。理由は簡単で,主たる市場が異なるからである。」
だと言う。本当に記者は「簡単な理由」と納得したのか?
しかし,私にはこの理由が何度読み返してみても理解不能だ。市場が違ったら特許侵害になったりならなかったりすると言うことだろうか? リサイクル品はアメリカでは認知されているビジネスであり,日本HP社も日本で特許権侵害を訴えるつもりはないと言っている。
ビジネス・モデル云々はまた別の問題だ。要らぬ混乱を招く論点逸らしと思える。
■極めて正論ではありますが,キヤノンも不正をしているかのような表現「キヤノンも正々堂々と」というのが少し気になります。消耗品ビジネスは不正なのでしょうか? また今回の事件は特許権を有するものと侵害するものとの民事訴訟であります。これを契機にお互いに手を結ぶというのは状況としてかなり無理があるように思います。
また,リサイクルへの消費者の関心の高まりがそのまま売り上げに貢献できるとするのは少し短絡的ではないでしょうか? 顧客は自身に対する利点を基準に取捨選択するのが通常の行動です。トータルで顧客に良いサービスを提供できるのであれは,和解,提携するということはありえるかもしれませんが,本体メーカーとリサイクル業者とは,向いている方向や立場が180度ずれていると思います。裁判上の和解はあっても提携はないでしょう。
■「誰よりもメリットを得るのは消費者でなくてはならない」ということは正しい。しかし一方で「消費者は身勝手」である。
「何を使うかは自由」と言いながら,自分で選択した結果・結末を,自分の否を隠してメーカーの責任にする。これも消費者である。メーカー推奨品以外のものを使用してトラブル故障を出しても使っていないふりをして,それが原因で本体側が故障しても「知らぬ存ぜぬ」を言う。これも消費者である。メーカーは,これらに相当量の時間や人件費を食っていることも事実である。
個人が良識や倫理を失っている時代において,消費者に「自由な選択」を容認する寛大な制度が,必ずしも良いとはいえない。
■ご提案の意図は理解しますが,現実問題としては,実現は難しいと思います。
印刷品質はプリンタ(ヘッドおよび制御)とインクの組み合わせで決まるといわれます。印刷品質で製品の売上げが変わりますから,そのチューニングのためにプリンタメーカーは多大な開発費を投じているわけです。ですから,プリンタメーカーが(わずかな違いであったとしても)品質が落ちるとわかっている互換品を簡単に認めるとは思えません。
また,プリンタメーカーは互換品を認めることにより,「本来得られるはずの売上げを失う」「互換品の承認作業のための負担が増える」「承認互換品による機器の不具合に対する責任が生じる」など,多くのマイナス面が発生します。これらのコストをカバーするだけの利益をロイヤリティで回収しようとすると,結局,互換品メーカーの製品価格は純正品と変わらないレベルになってしまうではないかと思います。
更に言うと,法的に互換品が義務づけられるようになったなら,プリンタメーカーもビジネスモデルを変更するようになるでしょう。インクの値段を互換品メーカーが参入不可能なほどに下げて,本体で利益を確保する通常のビジネスに戻るはずです。結局,互換品ビジネスというのは,サプライビジネスモデルに咲いたアダ花みたいなものではないでしょうか?
■再生カートリッジ製造業者が正々堂々と勝負すると言うのならば,使用済みカートリッジの回収方法を考え直す必要があるかと思います。
量販店に行くと,使用済みカートリッジの回収ボックスが置いてあるのをよく目にしますが,最近では,再生カートリッジ製造業者が設置した回収ボックスの方が目立つところに設置されていることが多いことが気になります。しかも,その回収したカートリッジは,再生カートリッジ製造に回されることは目立つようには書かれていません。つまり,少し斜に構えて見てしまえば,使用済みのカートリッジを「横取り」していると考えることも出来るかと思います。
正々堂々と再生カートリッジを作ると言うのならば,「この回収ボックスで集められた使用済みカートリッジから再生カートリッジを製造します。ご協力お願いします」とでも,大きく書くべきなのではないでしょうか。
ちなみに,私は出力されたプリントの色味が変わるのがいやなので,再生カートリッジは一切使ったことはありません。再生カートリッジがより受け入れられるようになるには,カラープロファイルを安定して提供できる程度にまで,品質を向上させる必要もあるのではないかと思います。





































