Tech-On!読者の皆様、本年もよろしくお願いします。

 本欄「さよなら技術馬鹿」の趣旨は「技術者の方に、技術以外のことをお伝えする」というものです。この趣旨にそって、昨年2005年に、色々なコラムを書いてみました。その中で、一番反響があったのは、掃除機メーカーの創業者兼会長、ジェームズ・ダイソン氏に関する一文でした。

 2005年11月末、ジェームズ・ダイソン氏にインタビューすることができました。インタビューが終わってから、「Tech-On!という技術者向けサイトでダイソン社製品のことを書いたところ反響があった。せっかくの機会なので、日本の技術者たちにメッセージをもらえないか」と頼み、色紙を渡しました。ダイソン氏は日本の色紙を見るのは初めてだったらしく、「この紙は面白いね。何に使うもの?」とつぶやきつつ、真剣な表情でTech-On!読者に向けたメッセージを色紙一杯に書いてくれました。

 今回、年明け企画として、この色紙を公開いたします。

 Tech-On!読者のために、いいお年玉ができた、と喜んで色紙を事務所に持ち帰ったものの、よくよくながめると読めないところがありました。そこで、ダイソン社の日本法人トップを務めていたゴードン・トム氏のところへ押しかけ、ダイソン氏の色紙を読んでもらいました。

 「長年見ているから、ジェームズの文字は全部読めるよ」と語るトム氏は日本法人の開設を手がけ、日本におけるビジネスを軌道に乗せた人物です。今年2006年は、世界最大市場である米国で、ダイソン米国法人の指揮をとっています。

 では、色紙の英文を公開します。活字の英文は筆者が読んでワープロに入力したもの、手書きの修正部分がトム氏によるものです。



 冒頭に「To BizTech and Tech-On!」とあります。BizTechとは、筆者と本欄イラストレータの仲森が関わっていたメディアです。「ビズテックの読者にもメッセージが欲しい」と依頼したところ、こう書いてくれました。

 ダイソン氏のメッセージは分かりやすいものですが、筆者なりに訳してみましたので、それも公開しておきます。

イラスト◎仲森智博
ビズテックとTech-On!の皆様

よくぞエンジニアの仕事を選んだ、エンジニアは最高の仕事だ!
どうか、自分のアイデアとデザインをしっかり信じて欲しい
困難はつきまとう、革新的なアイデアは簡単には受け入れられないから
諦めてはいけない!
何年かかろうとも、やり抜く価値がある
信念を持ち続けよう、幸運を祈る

ジェームズ・ダイソン 2005年11月21日

 インタビューは11月21日の早朝行われた。その日の晩、若いエンジニアやデザイナーのためにダイソン氏が主催している「Dyson Design Awards 2005」の表彰式があった。日本の若いエンジニアたちと談笑するダイソン氏は、インタビューの時よりはるかに楽しそうであった。そこでダイソン氏に聞いてみた。

 「やはりジャーナリストにあれこれ突っ込まれるより、エンジニアやデザイナーと話しているほうが楽しいですか」

 「斬新なアイデアを持っている若手と話すのは楽しい。でもジャーナリストと話すことも大事だ。新しいアイデアを最初に評価するのはジャーナリスト達だから。僕の時もそうだった」

 こう言ってもらったので、筆者はダイソン氏の色紙の冒頭にある「As engineers」を「As journalists」と読み替えることにした。

 なお、ダイソン氏のインタビューをもとに筆者が書いた『ひと劇場 掃除機作りに全情熱』という3ページの記事が日経ビジネス1月16日号に掲載されています。ダイソン氏が色紙を書いている写真が使われていますから、ぜひご覧下さい。

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