新開発のシート。背もたれ部を薄くし、後席の足回りの空間を広げた
新開発のシート。背もたれ部を薄くし、後席の足回りの空間を広げた
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 トヨタ自動車が発売した新型「オーリス」の特徴の一つが、全高を従来の1515mmから1460mm(2輪駆動車)に低くしたことだ。前面投影面積を小さくして空気抵抗を減らし、燃費を高められる。排気量1.5Lのエンジン搭載車でCd値は0.28、1.8Lエンジンの搭載車で同0.29と小さい。また全高が低いとロールしにくくなり、走行性能も高められる。

 全高を下げられたのは、トヨタ紡織が新しく開発したシートを採用したことが大きい。シートの背もたれ部の厚みを従来品から30~40mmほど薄くした。これで後席の足回りの空間を広げられる。

 全高を決める際に重要な点が、乗員の頭の位置である。頭の位置を下げられると、ルーフの高さを低くできて全高を下げられる。そこでカギを握るのが後席の足回りの広さ。人間が座るとき、「背中と、足のひざ下の角度をほぼ同じにすると疲れにくい」(トヨタ)ことが分かっているからだ。つまり足周りの空間を広げて乗員のひざ周りの角度を大きくすると、その分、後席の背もたれの角度を大きくできる。結果的に頭の位置が低くなり、全高を下げられるというわけだ。

 シートを薄くしつつも剛性を維持するため、骨格の配置などを変えた。加えてオーリスに採用したシートでは、前席の背もたれの横に張り出し部を設けた。旋回時などに運転者の体の横ずれを防ぎ、姿勢を保ちやすくする。トヨタは、「5年程度の周期でシートを大きく変える」(同社)。オーリスは、その周期にちょうど合う車両だった。トヨタは今後発売する多くの車両に、今回開発したシートを採用していく考えである。