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 サイエンス・インカレの表彰式で、会場の多くの人が受賞者と喜びを共有した。感動で目頭が熱くなったのは私だけではないと思う。これまでに数多くの科学系シンポジウムや学会に参加したことがあるが、これほど熱気にあふれた研究発表会は初めてだった。多くの次世代の若者にこのサイエンス・インカレに参加していただきたいという思いから、私が審査を担当して感じたことを述べたい。

 20Mバイトの応募ファイルをダウンロードして、書類審査が始まった。一つの研究に対して3人の審査員が応募書類を熟読し、課題設定、研究内容、創造性・独創性、成果の意義について10段階で評価して、票に記入する。将来の科学・技術の中核を担っていくであろう学生の皆さんの労作であり、生半可な評価はできない。審査担当の20~30件の研究の中には、いわゆる専門外の研究テーマもあったが、公平かつ客観的な評価ができるように関連研究の多量の資料に目を通した。それでも理解が及ばない部分については、学内外のその分野の専門の先生に(審査業務とは言わずに)直接伺いに行った。

 「出る杭を伸ばす」ためにも、良いところを見つけるように心掛け、すべての応募研究に評価理由とコメントを記した。書類審査の合同会議でも、良い研究はそれぞれ高い評価を付されており、独立した複数の審査員の間でもほとんど同じ審査結果だった。

 口頭発表やポスター発表では、プレゼンテーション能力はもちろん、質疑応答も評価の対象である。卒業研究との関連の有無や研究結果の成否にかかわらず、自分の研究がいかに面白いかを人に伝えるかもポイントの一つで、それは研究の重要な構成要素をなすものである。この点を理解している研究グループはいずれも高い評価を得ていた。2日目の口頭発表優秀者による研究発表では審査をしながらも、次世代の科学者・技術者の研究の質の高さに感服した。交流会では、審査を担当した研究グループの学生に労いの言葉をかけてまわった。そこでも、学生の皆さんのコミュニケーション能力の高さを感じた。企業の方々と積極的に研究の話をしている姿は研究者そのものだった。

 創造性・独創性の高い科学技術やその研究課題設定能力の高さが社会的にも求められている。そのような研究や能力を身につけるためにはどうすれば良いのだろうか。「センスに勝る努力なし」とは、研究者の間でよく言われる言葉である。まさに、そのセンスを磨くためには、地道な努力と多くの失敗や挫折さえもが必要とされる。学生の皆さんは自由な研究の発表の場としてのサイエンス・インカレを大いに活用し、センスを努力で磨いて自身の課題の発見につなげてほしい。

 これから参加される(または参加した)学生の皆さんが、近い将来に科学者・技術者としてサイエンス・インカレに関わってくださることを切に願っている。