COLLEGE 製造業の“本当”を探求
 

サイエンス・インカレへの期待

「優秀な理系学生の養成に関する事業」企画評価委員会委員からのメッセージ

東島 清=大阪大学 理事・副学長
2012/12/21 00:00
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 何日も考えた問題を解いたときの喜びは大きい。まして、世界中で誰も考えたことがない問題ならば、その喜びはさらに大きい。風呂の中で浮力の原理を発見したアルキメデスが裸のまま飛び出した、というのも作り話ではないように思える。先生に習うだけの授業に比べて、主体的に学ぶ方がはるかに高い学習成果が得られる。小中高の教育でも課題研究や自由研究が取り入れられている。高校までの課外活動などで自由研究を楽しんだ人も、大学に入ると一方的な講義に失望することが多い。

 大学を卒業すると社会人として扱われる。いつまでも「教えてもらう」生徒というわけにはいかない。大学に入ると「教わる」から「学ぶ」への意識改革が求められる。授業には問題意識を持って臨み、授業を受けた後にも学んだことの本質を思い返して、自分の頭の中で再構築する必要がある。その過程でたくさんの疑問が湧いてくるはずだ。身の回りでも、日頃当たり前だと思って見過ごしていることを、「なぜだろう、どうしてだろう」と考え直してみると、案外と理解していないことに気がつく。問題はどこにでも転がっている。自分で見つけた問題を自分で解決してみよう。答えを見つけたと思うと、さらに新たな疑問が生まれる。失敗した実験の原因を考えることは本質を理解する上で重要で、新たな課題を生み出す。多くの独創的研究が失敗の中から生まれている。

 大学には研究者が集まっており、自由研究には最高の環境が整っている。自分の問題を見つけたら友人・先輩や分野の近い教員に相談すると良い。理解も深まり、問題自身もより本質的な問いに変化し、先行研究や類似研究を教えてくれることもあるだろう。頼み込めば研究室で実験をさせてもらえるかもしれない。自ら学ぶ態度を身につけ、大学という知の宝庫を最大限に活用してほしい。

 自由研究をすることで、社会人として生きていく上で必要な色々な力を身につけることができる。これからの世界を支える若者には、複雑に絡み合う現実社会において、何が本質であるかを見抜き、さまざまな分野の人と協力しながら、問題を解決することが求められている。課題を設定する力、それを解決する力、他分野の人と協力したり分かりやすく伝えたりする能力は、研究者だけでなく企業人にも共通して必要なことである。

 サイエンス・インカレは、自由研究を楽しむことを覚えた学生が研究成果を発表するとともに、互いの発表を聴いて切磋琢磨する場である。現代科学は細分化しており、少し聞いただけでは異なる専門分野の研究を理解することは難しい。一方、大学生の自由な発想に基づく研究発表は互いに理解しやすい。刺激し合い、新たな課題に挑戦し、次世代を支える人材に育ってほしい。将来は、日本だけではなくアジアや世界の大学生が切磋琢磨する場になることを期待している。

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