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 先日、京都大学教授の山中伸弥氏がノーベル生理学・医学賞を受賞した。ノーベル賞を受賞した日本人としては19人目、生理学・医学賞としては実に25年ぶりの受賞となる。科学技術人材の育成に関する施策を担当している者として、大変喜ばしく思うと同時に次のノーベル賞受賞者を育てるべく心を新たにした。

 21世紀に入り10年以上が経ったが、世界にはさまざまな課題が山積している。例えば、医療分野には、まだ治療方法が見つかっていない病気がある。今回ノーベル賞を受賞した山中氏が開発したiPS細胞は、再生医療や創薬への利用が期待されており、山中氏は今後さらなる研究をするとのことである。その他にも、エネルギー問題や環境問題など数え上げればきりがない。

 このような課題を解決したり、日本が世界をリードしていく存在になったりするためには、科学技術が重要なカギとなる。そして、このような科学技術を支える人材の育成が何よりも重要だ。

 文部科学省では、2011年度(平成23年度)に「サイエンス・インカレ」を創設した。サイエンス・インカレは、自然科学分野を学ぶ全国の大学の学部生や高等専門学校生などが個人または2~3名のチームで取り組んだ自主研究の成果を発表し競い合う場である。募集分野は、「数物・化学系」「工学系」「生物系」「情報・融合領域系」の4分野、発表方法は「口頭発表部門」と「ポスター発表」の2部門。スポーツのインカレと同じように「科学の世界でも学生が競い合える場を作ろう」という思いから企画をした。

 実際、2012年(平成24年)2月18日(土)~19日(日)に開催した第1回サイエンス・インカレには、「あっ」と目を引く個性的な研究やレベルの高さに驚くような研究が集まり、白熱した大会となった。

 サイエンス・インカレは、「出る杭になってやろう」という前向きで研究意欲にあふれる学生のための大会だ。大学の学部生は、理系といえども、授業を受けて、試験を受けたりレポートを書いたりすることが多いのが一般的である。研究室の配属も、3年生の後期、あるいは4年生になってからという大学が多く、実際の研究活動はあまり長くはない。このような大学の授業は、「研究をしたい!」と思っている学生にとっては物足りないのではないだろうか。学生がもっと能動的に活動できる環境を整える必要があると思っていた。