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HOMEスキルアップマネジメント明日のエンジニアへの手紙2012 > 液晶・医薬を生んだ鈴木カップリング

明日のエンジニアへの手紙2012

液晶・医薬を生んだ鈴木カップリング

北海道大学 名誉教授  鈴木章氏(2010年 ノーベル化学賞 受賞)

  • Tech-On!編集部
  • 2012/02/24 00:00
  • 1/5ページ
北海道大学名誉教授の鈴木章氏
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 わたしが2010年のノーベル化学賞を受賞した理由となった「鈴木クロスカップリング」は、農薬や高血圧症の治療薬、液晶材料といった、さまざまな分野の製品を効率よく合成でき、その実用化につながった反応の手法です。

 クロスカップリング反応とは有機化学における重要な化学反応で、炭素同士を自由につなぐ反応を指します。カップリング反応とは、二つのものを結合させる化学反応です。カップリング反応のうち、異なる二つのものを結合して新たなものを作り出す反応が、クロスカップリング反応と呼ばれています。

 ところが、炭素同士を自在につなぐことは難しく、実現したのは約40年程前です。自由度の高いクロスカップリング反応を実現するためには、有機金属化合物と有機ハロゲン化物を混ぜて、さらにパラジウム化合物などを触媒として添加すると良いことがわかったのです。しかし、有機金属化合物には、不安定で危険という問題がありました。この有機金属化合物の代わりに、安定で取り扱いやすい有機ホウ素化合物を使えるようにしたのが、わたし達の研究成果です。

 有機ホウ素化合物を使うこと自体は、ほかの研究者も思いついていたかもしれません。しかし、有機ホウ素化合物は活性が低く、反応性が悪いのです。化学的に安定なことの裏返しです。このため、有機ホウ素化合物を使っても、クロスカップリング反応を実現できないだろうと思われていて、実行している研究者はほとんどいませんでした。

 突破口となったのが、塩基の導入です。例えばカセイソーダと呼ばれるNaOH(水酸化ナトリウム)を導入すると、OH(水酸化イオン)がホウ素と結びつきます。すると、もともとホウ素と結合していた有機基がイオン性を増し、炭素の陰イオン性が増してきます。これによって、有機ホウ素化合物も有機金属化合物と同じように反応するのではないかと予想したわけです。実際に塩基を加えると、狙ったような反応が起こることがわかりました。こうして、米国から帰国した1965年以降、三十数年間かけて、さまざまな有機のホウ素化合物の化学的性質を把握してきました。

社会の役に立ってほしい

 わたし達の研究成果が、医薬品や農薬、液晶材料、有機EL(エレクトロルミネッセンス)など、さまざまな分野の製品の実用化につながったことは、とてもうれしく感じています。というのは、われわれがかかわっている有機化学の分野だけでなく、科学のさまざまな分野の研究者は皆、自分自身の研究成果が、社会の役に立ってほしいと思っていますが、実際に社会で役に立つ研究成果は、それほど多くありません。

 わたしの場合、研究していた時点では、例えば液晶材料や有機ELというのは、存在していませんでした。こうした未知の材料や応用が、われわれの研究成果を用いて開発されてきました。われわれにとっては、想像していなかった分野で、研究成果を使ってもらえるようになったのです。

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