プレゼンテーション大会の様子
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 他校のプレゼンテーションを聞いて互いに評価し、多くの得票を集めた学校を表彰する。4回目を迎えた2011年の「The高専@SEMICON Japan」(2011年12月7~9日、幕張メッセ)では、このようなプレゼンテーション大会を初めて開催した。参加した学生からは、「自分たちの発表に自信を持っていたが、他校の発表を聞いて、負けていると思った。とても刺激になった」という声があちこちから聞かれた。

 The高専@SEMICONは、高等専門学校(高専)などの学生が、半導体製造の専門展示会「セミコン・ジャパン」で自分たちの研究成果を発表する企画。協力企業が自社ブース内のスペースを提供し、そこで学生たちが専門展示会に訪れた国内外の来場者に向けて、自分たちの研究内容を説明する。各校のブースでは、若者らしい新鮮なアイデアにあふれた研究の工夫や、日を追うごとに説明が上達していく学生たちの成長力を感じとれる(第3回のレポート第2回のレポート第1回のレポート)。

 今回のプレゼンテーション大会では、燃料電池を載せた模型電車について発表した大阪府立大学工業高等専門学校が優勝した。また、僅差の2位には同点で、ナスミス式望遠鏡について発表した茨城県立水戸第二高校と、災害救助支援ロボットや小学生向けのパソコン・ゲームについて発表した八戸工業高等専門学校の2校が入った。以降では、各校がプレゼン大会で発表した内容を中心に、The高専@SEMICONのブースで披露した主な展示内容を紹介する。

大阪府大高専のブース
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 優勝した大阪府立大学工業高等専門学校は、自分たちで開発した燃料電池システムを使って、模型電車を走らせるデモを実施した。1年前に披露した模型電車よりも、走行スピードが速くなったことが特徴である(関連記事1)。燃料電池に大気中の酸素を取り込むための吸気口を大きくして、発電の効率を高めることで実現した。今後は、現在ボンベから供給している燃料の水素を、水の電気分解によって得られるようにしたいという。「1年後に展示できるように開発することを目指す」(同校)とする。

水戸第二高校のブース
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 第2位の水戸第二高校は、前回に続き、車椅子に座ったままで星空を観察できる自作のナスミス式天体望遠鏡を展示した。「車椅子の同級生と一緒に望遠鏡で大好きな星空を見たい」という夢をかなえるために製作した天体望遠鏡である(関連記事2)。前回の展示以降、同校の学生は望遠鏡の電動化に向けた製作を開始した。今回は、電動化に向けて架台を丈夫なものに作り替えた望遠鏡を披露した。また、同校は、米国の科学誌「The Journal of Physical Chemistry」に論文が掲載された「BZ反応」に関する研究内容についても展示した。

八戸高専のブース
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 水戸第二高校と同じく第2位の八戸工業高等専門学校は、災害救助支援ロボットや、加速度センサを使った小学生向けのパソコン・ゲームを展示した。災害救助支援ロボットは、人が入り込めないような危険ながれきの中を走行し、生存者を発見するための小型ロボットである。ウェブ・カメラの映像を確認しながら操作でき、最大高さ20cmの段差を昇降できる。また、小学生向けのパソコン・ゲームとして、操作が分かりやすく体を使って楽しめる二つのゲームを展示した。剣型のコントローラを振ることで爆弾を破壊するゲームと、画面内の敵をパンチして倒していくゲームである。いずれも、加速度センサを用いることで実現している。

 表彰された3校以外からも、学生らしいアイデアにあふれた技術や研究成果が披露された。順に紹介する。

香川高専のブース
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 香川高等専門学校は、呼吸センサによる行動モニター・システムと、近赤外光を用いた眼底カメラを展示した。呼吸センサはベルトのような形状をしており、体に巻いて使う。呼吸による胸囲の変化を、センサの伸縮によって測定する。測定データはスマートフォンやパソコンに送信できる。無呼吸などの異常時にはアラームを鳴らしたりできる。近赤外光を用いた眼底カメラは、散瞳剤によって瞳孔を拡大しなくても眼底を撮影できるのが特徴である。被験者への負担が少なく、乳幼児や高齢者の眼底撮影にも向く。また、近赤外光を用いることで、従来の可視光による眼底写真では見えなかった異常が見えるようになるという。