私がやりたい事は環境を守ること

自然エネルギーへの注目が集まり、サステナビリティ(持続可能性)やエコへの関心が集まる中、「環境」という名前がつく大学や、学部、学科が増えてきました。「環境」の冠がついている学び舎では、必然的に環境への配慮、自然との共生を重んじる教育がなされます。

「はい、私にはやりたいことがあるんです。環境を守る仕事に就きたいんです」

と、Sさんが、環境に対する熱い想いとともに就職相談にやってきたのは、就職活動が本格化する 3月のことでした。Sさんは、いかに環境が大切か、そして、いかに環境を守る仕事がやりたいか、を一生懸命語ってくれます。環境とデザインを学ぶ中で、植物の名前を覚えたり、農家の方とふれあったり、地球環境とゴミをテーマにしたアート展を自ら開催したりする中で、環境への想いは深くなっていったといいます。

しかし、もう会社説明会や応募が始まっている時期です。採用の流れに乗っているべき時、「やりたいこと」を語るということは、「やりたいこと」が具体的にならずに苦しんでいるのでしょう。

で、どの会社受ける?

と聞くとSさんは急におとなしくなってしまいました。

「それが・・・わかんないんです。

どの会社も環境を守ります、みたいなことは言っているんですけど

学んだ環境を守る仕事に就けそうな募集職種はないし・・・

どの会社に入れば環境を守れるんですか」

「やりたいこと」「学びを活かす」に足をとられる形で企業も見つけられず、就職活動ができなくなってしまっています。Sさんの悩みは「環境」という言葉が持つ獏然とした意味の中で、見えない壁にぶつかって混沌としていました。

環境を守る仕事って

かつてアメリカで「IT」に重点的に予算が配分された時、高等教育機関にIT系学科が置かれて倍率が高まり、優秀な人材はITを志しました。そして、ITに関わる求人も増え、大きな雇用を生み出しました。教育されたものは、市場で活かせるもの、でした。

「環境」の学びも、街づくり、建築、デザイン、と多方面からのアプローチ教育がなされてきたのですが、Sさんが学んでいるような公園設計等の仕事は、公共事業削減により、その市場は急速に縮小してしまった感があります。企業も、木を植える活動をしたり、環境負荷の低い商品を作ったり、ISOなどの規格も取得しようとしていますが、学びと直結した業務としての募集はありません。例え募集があったとしても理系職種であり、Sさんが学んでいるビオトープや景観デザインの学びが理系と戦うのは難しいです。このような総合的な状況の話を、「環境」を教える学びの現場で伝えてくれる人はなかなかいません。「環境」を守ることに人一倍強い責任感を燃やしているSさんが気づかないのも無理はないかもしれません。