――出る杭になるためには、どうすれば良いでしょうか。

 オリジナリティのある研究テーマを、自信を持って、分かりやすく説明できることが重要だと思います。さらに、自分の研究テーマがどのように世の中の役に立つのかを説明できるプレゼンテーション能力が重要です。「これを実行したら、こんなに良いことがあるぞ」と、魅力的に説明できる力です。そして、研究に取り組んでいる自分自身が輝いていること。自分が楽しんでいることが周りに伝わることも必要だと思います。これらを持ち合わせていると、審査員の先生も「こいつはすごいな」という目で見るでしょう。そのような学生が、出る杭になっていくのだと思います。

――オリジナリティを磨くためには、どうすれば良いでしょうか。

 個人としての意見ですが、先日参加したスーパーサイエンスハイスクール(文部科学省が科学技術や理科・数学教育を重点的に行う高校を指定する制度)生徒研究発表会で、参考になると感じたことがありました。

 キラリと光って見えるテーマは、大人が考えつくようなものではなく、高校生目線で日常生活に根差して不思議に思ったことを掘り下げて実験や観察をしたものでした。自分たちが「不思議だなあ」と思ったことにチャレンジしたものには、オリジナリティを感じました。研究の完成度は別にして、テーマの選び方が面白いと感じたのです。最先端にこだわるのではなく、学生の目線で、日常の生活や大学での勉強を通して湧いてきた疑問やテーマにチャレンジすると、オリジナリティが出てくるのではないかと思います。

 ただ、自分の体験から湧いて出てきた疑問にチャレンジすると、テーマのオリジナリティはあるものの、結論に到達しないままに終わる可能性があります。研究テーマには、結論の出やすいものと出にくいものがあります。この研究テーマを突き詰めていくと、結論が出るのか出ないのか。そこを判断するためには、先生の助言も大切になります。

 私も大学院で博士論文を書いたときに、自分でテーマを選ぶところまでは何とか出来ても、それが在学中の3年以内に答えが出るのかどうかは分かりませんでした。これは、学生では分からないのです。そこは、研究のプロの教授が助言してあげないと、本当に出口のないトンネルに入ってしまったまま出られなくなってしまいます。成果を出すところまで到達して本当に良い研究ですから、そこはプロの先生のサポートに期待しています。

――ところで、サイエンス・インカレを始めたキッカケは。

 理系といえども大学の学部生は、3年生までは、ひたすら授業を受けて、試験を受けたりレポートを書いたりするのが一般的です。研究をするのは、4年生になり、研究室に配属されてからです。しかも、テーマが決まるまでに数カ月かかるため、実際の研究活動は半年程度です。こうした状況を変えて、学部生がもっと能動的な活動を行う環境を整える必要があると思っていました。そこで、自主研究について発表し、全国の理系学生と競い合える場を作ろうと考えたのです。

――将来、サイエンス・インカレをどのようなイベントにしていきたいですか。

 スポーツのインカレと同じように、「いつかは出たい」と理系学生に思ってもらえるようなイベントにしたいですね。科学技術を学ぶ学生が、このサイエンス・インカレをモチベーションとして、日々の研究活動に取り組めるようにしたいと思っています。そのためには、知名度の高いしっかりしたイベントしなければなりません。理系学生なら皆が知っていて、「出てみようじゃないか」と思うようなイベントにしたいと考えています。

板倉周一郎氏

 理系学生に光を当てて活躍の場を広げるというのは、魅力を高めるという意味で、理系離れ対策においても有効だと思っています。サイエンス・インカレで表彰された学生が新聞に載ったり、テレビに出たりすることは、大きなモチベーションになるでしょう。メディアにもしっかり取り上げてもらえるようにして、例えば受賞者が出身校の先生に「やったぞ」と言えるような、誇らしいものにしていきたいと考えています。