やって見ると、私の予想通りの展開になった。すなわち、選ぶ技術は、人によってバラバラだった。ある年の私が選んだNo.1はコンタクトホールだけでプログラミングするFPGA(field programmable gate array)だったが、他の4人は全く違っていた。ひとりはSiGe(silicon germanium)歪チャネルを使った高速のトランジスタ技術を、次はバイオセンサLSIを、もう1人はRRAM(resistive RAM)をNo.1に選んだ。私の目論見は当った。選択はこれほど違うものかと思ったし、彼らの主張にも大いに啓発された。私は喋った(しゃべった)。ホストだから喋るのは当たり前であるが、彼らの考えに対し全精力を注いで賛成/反対の論陣を張った。議論は予定の1時間を超えて深夜に及んだ。議論するたびに分かることが増えていった。なるほど「言うが花」だ。

 我々は各々違った会社に所属しているが、半導体という同一の産業分野に属してもいる。会社という立場では競争しているが、半導体という大きな立場では共にその発展を願う仲間である。つまり協業している。海外のエンジニア達はこの2つの立場を上手く使い分ける。別にこれは会社の意見だ、これは個人の意見だと断るわけではないが、聞いているとよく分かる。つまり、彼らはエンジニアとしての自立度が高いのである。

 「言うは自立度が高い」とも言えるのではないかとも思った。シリコンバレーに行くと、ワークショップ(workshop)、ランチミーティング(luncheon meeting)、もしくはパネル討論(panel discussion)形式の会合が多いことに気付く。だいたいが、将来技術に関する討論や現下の課題に関する解決策とその選択肢のような議論が多いが、彼らは非常に誠実に自分の意見を述べる。将来のことだから不確かな面もあるのだが、彼らはあまりごまかさないし、いい加減さもない。「言うが花」は彼らにとって当たり前のことなのだ。

競争と協調の調和の時代に

 このForumの主題であった半導体R&Dの将来についても触れておかなければならないだろう。まず、将来の半導体業界の望ましいあり方については、ある数の大会社と多数のベンチャーが共存するエコシステム(ecosystem、生態系と訳される)が良いという結論になった。大きな会社は安定しているという利点があるが、大きいがために安定を求めて新たな変化には躊躇するようになる。それを補い新しい展開を引き起こすのがベンチャーである、という考え方だ。落ち着いて考えて見れば、半導体分野がこんなに大きくなる前は、どの会社もベンチャーみたいなものだった。

 それが、グローバル化し複雑化していった。そして、半導体のR&Dのやり方を刷新する時が来た。「競争という過去の軸に協業という新たな軸を加え、競争と協調の調和を求めることにある」という考えを共有した。さて、その具体策とは何か。半導体分野において、R&D協業によって何ができるのか。それを見極めようと、私は協業の場(STARC)に身を移して、汗を流してきた。そして、協業の必要性は半導体分野ばかりではなかろうと思うようになった。真の協業は一筋縄ではいかない。しかし、大いに「言うが花」を実践して、願わくばこの分野で新たなパイオニアになりたいものだと思っている。