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下東 勝博=半導体理工学研究センター
2011/08/19 00:00
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 「言わぬが花」という、ことわざがある。「はっきり言うと差し障りがあるから、言わないほうが良い」という意味だ。そういう場合があることは確かだが、エンジニアにとってこれは危険である。スピード・ラーニング(speed learning)ができないからである。

 エンジニアの使命は将来を考えることだから、さまざまな仮説を立てる。一般に仮説は不確かだから、そのまま口に出すのははばかられよう。「言わぬが花」が正解かもしれない。こうして誠実なエンジニアほど寡黙になる。しかし、仮説をある程度の形にするのには時間がかかるし、間違っていることもある。エンジニアは仮説や将来に対するさまざまな意見を持っているため、それらすべてを自分一人で抱えていては立ち往生することにもなりかねない。これを解決する1つの手段が、『逆説「言わぬが花」』である。私のTO DO LISTには「言うが花」と書いてある。

自分の意思とは異なる主張を強弁

 「貴君は潜在的に有能であるが(potentially capable)、その慎重さ(deliberate in speaking)は学習スピードを遅くする」。これは米Stanford Universityでディベートの課外クラス(extracurricular activity)に参加した時、講師からもらった評価の最後の文章である。一緒に固体物性論を受講したクラスメートに誘われて、そのクラスに参加した。ディベートは、ある主題に対し賛成派と反対派とに分かれて主張を闘わせるものだ。ただしこのクラスでは、賛成派か反対派かは自分の意思に関係なく割り振られた。このため、最初、私は戸惑った。自分の本当の意見とは多少違ったこと、もしくは不確かかもしれないと思うことを強弁しなければならなかったからだ。従って、私はいつも悩んでしまって、意見を言うのが遅かった。

 他の人はそうではない。意見を出すのは早いし長々と演説する。しかし、その中にはいささか納得しがたいものもある。よく考えて、そういう論理には反論するのだが、どうしても話す機会が少なかったのは認めざるを得ない。出さない意見に反論はない。意見を出せば、それを大勢の人が考えて反論してくる。思っていることに説得力があるかどうかが、直ちに分かる。スピード・ラーニングなのだ。もちろん、大勢の意見が必ずしも正しいわけでないが、少なくとも自分と違った考えを素早く学ぶことができる。エンジニアにとっては「言うが花」なのである。

 クラスメートは心配したのか、「何か言われた」と聞いてきた。多少へこんだ風を装って笑いながら「言わぬ馬鹿だとよ」と言って評価を見せた。彼はそれを読んで大真面目で言った、「そんなことは書いてない。もう少し積極的になれば、さらに良くなるとのコメントだよ」。「分かっているよ」。そして、2人で大笑いした。「言うが花」は彼らにとって当たり前のことなのだ。

R&D責任者の悩みは世界共通

 1990年代に入って私は、グローバル化し複雑化が加速する半導体のR&Dの新しいやり方はどうあるべきかという問題に悩まされるようになった。半導体R&Dの責任者としての忙しい日常の中で忘れてしまうこともあったが、何かの拍子にそれは頭をもたげてくる。やるべきことにリソースが追いつかない。次第に、今までのやり方を継続するといつかは破綻するのではないかという恐れも感じるようになった。

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