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ピンチからもチャンスからも逃げない(前編)

渋谷 和宏=日経BP社 ビジネス局長
2011/06/16 11:00
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 これは誓ってもいいが、働いていると転機は必ず、それも突然やってくるものだ。そしてその渦中にあっては、それが自分にとってチャンスなのかピンチなのか分からなかったりする。それはまあそうですよね。流れの中にいる人間は、流れ全体を俯瞰(ふかん)することなどできないのだから。
 とはいえ間違いなく言えるのは、渦中においてどのように行動するかはその後の仕事に大きく影響する事実だ。
 今回と次回の2回にわたって僕の拙い経験を紹介してみようと思う。

 ビジネス誌の副編集長になってしばらくしてからのことだ。上司から「別冊をまるごと1冊作れ」と言われた。僕がいたビジネス誌では別冊を年間数タイトル出しており、それらの編集を担当していたデスクが異動したため、仕事が回ってきたのだ。
 僕は、「どうせやるならこれまでのシリーズを踏襲するのではなく、20~30代向けの別冊を出してみたい」とその場で提案した。
 20代の頃、僕は若手向けのビジネス誌をいつか作ってみたいと考えていた。経験を積み、新雑誌の創刊がいかに大それた仕事なのかを理解するようになってからは、そんな夢を見ることもほとんどなくなっていた。しかし、別冊と聞いてかつての思いがよみがえったのだ。
 僕は部下である30代前半のIくんとともに別冊作りを始めた。Iくんはビジネス誌に異動してきたばかりで、経済や経営についてはあまり土地勘がない。おまけに僕に勝るとも劣らない人見知りのうえに、人から呼びかけられると「うおー」と動物みたいな返事をしたりする。でも、嫌らしいところが全くない純粋な人がらが憎めなかった。
 僕たちは文字通り寝食を忘れて仕事に取り組んだ。20~30代向けの別冊なんてめったに売れるものではないから、作る機会はこれが最初で最後だろう。悔いのないように全力を尽くそう──そんな気持ちから懸命に企画を考え、取材し、記事を執筆した。
 2カ月後、出来上がった別冊は予想に反して売れた。販売担当者から知らされるデータに接するたびに、僕は自分たちの作ったものが読者から受け入れられることの素晴らしさを実感し、「こういうのって本当に幸せな気持ちになるんだな」としみじみ思ったものだった。

 それから1年半年後。
 僕は表参道にある喫茶店のテラス席で一人途方に暮れていた──。

 若手向けの別冊がそこそこ売れたことで、僕は以降も別冊の編集を担当し、第2弾、第3弾と作り続けた。
 その結果、20~30代向けのビジネス誌を創刊する新規プロジェクトのリーダーになってしまった。基幹媒体の一つであるビジネス誌の読者より若い読者を開拓する──そんな会社の方針と僕たちのやっていることが合致して、新雑誌の開発責任者および創刊編集長を命じられたのだ。
 しかし嬉しかったのは初めの2~3日だけだった。創刊準備に向けて動き出したとたん「これは大変だ」と頭を抱えてしまった。若手を狙ったビジネス誌はうまくいかないという常識が立ちはだかったのだ。
 広告について協力をお願いできそうなある会社を訪ねたときのことだ。プロジェクトの概要を説明する僕に、50代の部長はじめ社員数人が「やめた方がいい」と声をそろえた。
「悪いことは言わない。あなたのキャリアを考えたらプロジェクトはすぐに中止した方がいい」
 部長のSさんはいつになく親身な顔だ。
「だって、うまくいくはずがないよ。失敗したら、あなたが悲惨な目に遭うばかりか、周りにも迷惑がかかる。別冊はそこそこ売れたとあなたは言うが、別冊と本誌は違う。定期刊行物である本誌は、統一したコンセプトに基づき、毎号違ったコンテンツを提供して、読者をつなぎ止めなければならない。フロック(偶然の幸福)は通用しないよ」
「ですから、これまでにないコンセプトを打ち出して、面白いものを作れば……」

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