本が好きなので司書を目指していたけれど

 「本が好きなので司書になりたい」という学生にしばしば会います。大学選びまでは、好きなものを極める、という目的で、すいすい進んでこられたのですが、その先がどうなっているかまではたいてい理解していません。Sさんも、本好きで司書を目指していた一人でした。

 「高校の先生に相談したら、図書館司書の資格が取れるからって勧められて、それで入ったのが今の大学なんです。でも、入学したら、資格が取れないことがわかって、あまりにショックで落ち込みました」

 高校の先生が嘘を教えたわけではないのです。確かに、以前は資格が取れましたし、昔々をたどれば図書館司書になった先輩もいました。しかし、近年の大学のカリキュラム改編に伴って司書資格は取得できなくなったことを、進路指導の先生も知らなかったのです。

 確かにSさんは本の虫でした。ジャンル問わず、活字を読むのが苦にならず、休日の本屋めぐりを趣味とするほどです。口数は決して多い方ではありませんが、知識は豊富で、要約したり、整理したりする力もあります。この力が活かせるのは司書だけではないと思うのですが・・・。

図書館司書になるためのルートマップ

 図は、図書館司書になるためのルート図です。

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 確かに今のSさんは司書になるための一般的なルートである、大学で図書館司書課程を履修し、司書資格を取得するのは難しくなってしまいました。しかし、卒業後司書補として実務についたり、働きながら通信教育や夜間大学に通って、司書資格を取得したりする方法もあります。図書館司書の仕事を募集するのは、図書館そのものではなく、それらを運営する地方自治体です。不定期に実施されるので広報誌やホームページで調べる必要があります。

 しかし、このルート上には難関がいくつもあります。まず、司書補という仕事はほとんど募集がありません。さらに最近は公共サービスの民間委託化による専門化、コスト削減が推進されているため、図書館運営業務そのものを民間企業に委託する自治体が増えています。その場合アルバイトや契約社員のような待遇で採用されることが多く、正職員や専門職として採用されることはめったにありません。図書館司書の資格が取れたとしても、図書館の正職員として、さらに地元で、採用される可能性となると、奇跡的な確率です。