学者になるにはどこの大学院に行けば有利ですか

 大学に入学して1カ月、キャリアガイダンスが終わった直後、一人の男子学生が教壇に向かってきました。しっかりと前を見据え、迷うことなく歩いてくるその姿は、自信に満ちていました。その表情から、自分がやりたいことは決まっているな、進学かな、職種かな、入りたい会社名が出てくるかもしれない・・・と推測して近づいてくるのを待ちます。

 「僕は、学者になりたいと思っているのですが、どこの大学院に行けば有利ですか。」

 え?大学院に行くべきか、という相談はよく受けますが、学者になるために有利な大学院について相談されるとは、正直、思ってもいませんでした。しかし、学者、という言葉を除けば“大学院選び”と考えることも出来ます。教授あるいは研究室によって、専門や得意分野は存在しますから、自分が極めたいと思っている分野がどこかによって、師事する先生が決まり大学も必然的に決まってきます。

 そう、学者になりたいの。で、どんな研究をしたいの?

「まだわかりません。なんせ大学に入ったばかりですから」

 あらら。気を取り直して、話をきくと、彼のいう「学者」はマイペースな時間管理の中で、好きな研究に没頭して高額の給料をもらえる、大学の先生のイメージを持っていました。ごく普通のサラリーマン家族に生まれた彼が、研究したい分野があったわけでもないのに「学者」になりたいと思ったのは、「安定」と「名誉」の象徴としての仕事が「学者」だったからなのです。

 この彼の、学者になりたいという「夢」に感じるあやふやさはいったい何なのだろう、と考えました。

夢の階層を理解する

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 夢には階層があります。

・第1階層:理念

 影響力のある存在になる、安心・安全を得る、などの願望であり、どんな仕事、環境下においても求め続ける人生における自分のあるべき姿ともいえます。

・第2階層:価値観

 責任のある仕事をする、他人を支援するなど、理念を貫く、あるいは近づくために、自分の判断がする基準であり、大切にしたい信念ともいえます。