「これ1本で完結」をウリにした、多機能型スキンケア用品が売れている。

 気を吐いたのは資生堂だ。

 「専科 保湿クリームからつくった化粧水」は、2010年9月に発売したスキンケア用品だ。特徴は、化粧水でありながら、肌に保湿クリームの潤いを与えることができるという多機能性にある。発売後、4カ月で累計出荷個数は300万個に達した。

資生堂の「専科」シリーズ。いずれも、店頭価格は1000円を切る低価格帯だ

 2011年2月中旬には日焼け止め「専科 ミネラルウォーターでつくったUVジェル」(全2品目2品種、店頭価格700円前後)を、3月中旬には美白化粧水「専科 美容液からつくった化粧水」(全4品目4品種、店頭価格980円前後)を発売した。UVジェルはメーカー出荷数ベースで、当初計画を3割超えるペースで推移している。

 カネボウ化粧品は3月18日、配合成分と多機能を重視した低価格志向の新ブランド「潤 高保湿液」を発売した。高まるセルフスキンケア志向に応える商品で、「拡大する低価格スキンケア市場に本格参入する新ブランド」(カネボウ化粧品)としている。

 1本で化粧水、乳液、美容液の効果が得られる点が最大の特徴だ。低価格志向の消費者に向けて、詰め替え用も用意している。

 カネボウ化粧品は2010年9月に「経済応援型」を意識したスキンケア用品「フレッシェル ザ ベーシック」を発売。化粧品、乳液などをラインで用意し、さほどお金をかけずに同じブランドの商品を買い揃えられる点をウリにしていた。

 「潤」の店頭価格はボトル入りで約980円、詰め替え用が約800円。低価格は維持しつつ、「BBクリーム」などに代表される多機能型スキンケア市場を意識した。同ブランドを投入することで、単機能派から多機能派まで、セルフスキンケアユーザーを余すところなく取り組もうと目論む。

 日本における2010年の1000円以下セルフスキンケア市場規模は、2006年を1割強上回る水準。ロート製薬の「肌研(ハダラボ)」など、大手化粧品メーカー以外の参入も相次いでいる。中でも、多機能型化粧水が売れる背景には、「いろいろなアイテムを買い揃えなくて済む」という節約志向がある。スキンケアの時間を短縮できる点も、働く女性や子育てに時間を取られがちな女性層に支持される理由の1つだ。

背景にはアジア戦略の強化が

 各社がこぞって低価格スキンケア用品に力を入れる背景には、化粧品メーカーの今後を左右する、新興国市場やアジア市場への戦略強化がある。

 資生堂は「専科」を「アジア戦略ブランド」と位置づけている。日本の市場はもちろんのこと、その先にあるアジアの市場、特に成長著しい中間所得層も視野に入れる。「スケールメリットを生かし、コスト面での効率化を高めることで、上質な商品をリーズナブルな価格で配置する」(資生堂広報)。

 台湾では既に、2010年10月から「専科 保湿クリームからつくった化粧水」を発売している。現地で人気のドラッグストア「ワトソンズ」では、全取り扱いアイテムの中で売り上げ10位以内に入るなど、台湾でも高い支持を得ている。新製品2品も、今後随時アジア各国へ導入していく予定だ。

 カネボウ化粧品は「現段階では特に予定していない」(同社広報)とするが、将来的に「潤」を中心にアジア市場に日本と同様の商品を投入する可能性はある。

 多機能で低価格。このキーワードがどうアジア圏に浸透するか、今後に注目が集まる。