親は、一から商売を始め、複数の拠点を展開する地元の成功者。子も、親の生き方を見習ってお金の使い方を気にすることなく突き進んできて、大学4年になり、就職活動をしてきました。

 しかし、今日は9月30日。明日は内定式で騒いでいる友人たちを見て、内定を持っていない子は、さすがに不安になってきました。そんな親子の会話です。

子:就職どうしようかな、お父さん、どう思う?
親:今まで、お前のやりたいようにさせてきただろう
  高校だって、大学だって、自分で調べて決めてたじゃないか
子:いや・・・家族で方向性を決めなさいって言われたから
親:自分の人生なのだから自分の好きなようにしたらいいじゃないか
  なぜ今さら親に意見を求めるんだ
子:うーん・・・
親:いいか、苦しくても一人で頑張るんだ、お父さんも今までそうやって生きてきた
  人の力なんかに頼ったら、お前の今までの努力がムダになるんだぞ
 (ガチャッ・・・ツー・ツー)

 お父さん、子を千尋の谷に突き落としてしまいました。お父さんはご自分の今までの強気な人生経験から、孤独の戦いを子に強いてしまいました。

 うまく転がって成功したら、最強の社会人になるでしょう。しかし、不安から立ち直れなかったら。就活失敗、就職浪人、あるいは、引きこもり、になってしまうかもしれません。

 子は、今まで就職活動してきて、世間が大騒ぎしている氷河期の情報をいやというほど、痛感しています。有名ブランド企業を受ければ、4時間かけて作ったエントリーシートもあっけなくNG。不合格通知すら送られてきません、悶々としています。

 聞いたこともない企業を受ければ、「この大学行って、この勉強しているのに、なんでうちなんか受けるの」といわれ、またNG。

 受けるのも怖くなり、数社で就職活動の足が止まってしまいました。このまま行ったら、進路がないまま卒業式を迎えてしまうかも知れない。その不安がピークに到達して、「就職どうしよう」という言葉をようやく吐いたのです。

 9月30日にお父さんが、内定がない子どもを落とした谷は、まさに千尋(1.8km)の深さなのでした。