暦の上では立春も間近。しかし、今年の冬は西日本を中心に大型の寒波が襲い、寒さはむしろこれからが本番だ。億劫な外出の心強い味方と言えばカイロ。ただ、エコや節約を求める時代の流れに乗り、カイロも「脱・使い捨て」が脚光を浴び始めている。

 「使い捨てないカイロ」としてヒット商品となったのが、三洋電機の「エネループ カイロ」だ。卵のような楕円形のカイロにアダプターを取りつけて内蔵バッテリーを充電すると、数時間は発熱し続ける。繰り返し充電できることを特徴にうたった。

 2006年末の発売当初は知名度が低かったものの、かわいらしいデザインも手伝って、翌年以降は店頭で品薄状態が続いた。

三洋電機の「ウエストウォーマー」はお腹の冷えや腰痛対策にも使えるという

 その三洋が昨年秋に派生商品として発売したのが「ウエストウォーマー」だ。黒いベルトにヒーターが内蔵され、充電器からの電気を使ってじわじわと腰やお腹を温めてくれる。つまり、腹巻とも兼用できるわけだ。外出時だけでなく、デスクワークが多いビジネスパーソンが腰痛防止にオフィスで使うこともあるのだという。

 発熱時間の目安は3時間半ほどで、服の下に巻いても気にならないデザイン。ウエストサイズも60~80cmと80~100cmの2種類を用意している。

 同様の発想で2009年秋に発売した「ネックウォーマー」もマフラー代わりとして人気は上々だ。家電量販店だけでなく、雑貨店などへも販路を広げたことで、ウエストウォーマーが2万個、ネックウォーマーは3万個のメーカー出荷分が完売寸前の売れ行きだ。

 通常の充電式カイロについても、片面しか温まらない従来品はカップルや夫婦を狙って2個セットの販売を開始。また両面が温まる箱形も追加発売して、好調な販売を維持している。

 三洋の“電気式”は、使い勝手や製品の幅広さで優れるが、実勢価格が3000~5000円前後とカイロのイニシャルコストとしては、少し割高だ。一方、より割安に手に入る「使い捨てないカイロ」もある。

見た目は「保冷材」でも発熱

デザインが女性に好評なトランザクションの「リウォームカイロ」

 雑貨などの製造販売を手がけるトランザクションが販売する「リウォームカイロ」は、ハート形や四角形の袋に着色した透明ジェルが詰められており、一見、保冷材のよう。

 最初に使う際に、袋の中の金属のボタンを押すと、ジェルが結晶化して、発熱が始まる。使い終わった後も、繰り返し温水で温めれば、30分間ほど熱を保ち続けるのだという。

 そもそもカイロは材料となる金属などの混合粉を反応させて長時間発熱する製品だが、このリウォームカイロはジェルに含まれた酢酸ナトリウムなどを反応させて発熱・保温に利用した。

 手間がかかる割に保温時間が短いものの、価格は200円前後とお手頃だ。トランザクションは主に企業などのノベルティー品として販売している。女性層の人気が高く、2009年9月の発売以来、累計約9万個を販売。昨年9~12月は販売数が前年同期比3倍近くまで急増したという。

 日本カイロ工業会によると、2009年度(2009年5月~2010年4月)の加盟企業のカイロの国内販売実績の合計は2008年度から2.9%増え、およそ15億枚。販売枚数はその年の気候変動によっても大きく左右されるというが、従来型のカイロも用途や使用時期が多様化することで、需要を維持している。

 カイロそのものは、江戸時代以前に起源がさかのぼる古い商品ではあるが、「温まりたい」需要は衰えない。新たな技術や知恵で、市場はまだまだ拡大しそうだ。