車いすに座ったまま天体観測できる,手作りのナスミス式望遠鏡
車いすに座ったまま天体観測できる,手作りのナスミス式望遠鏡
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 「車いすの同級生と一緒に望遠鏡で大好きな星空を見たい」――。このような夢を自分たちの力でかなえた女子高生がいる。茨城県立水戸第二高校の地学部の学生たちだ。同校のメンバーが「セミコン・ジャパン」(2010年12月1~3日,幕張メッセ)の学生向け企画「The高専@SEMICON Japan」に参加し,車いすに座ったままで星空を観察できる自作の天体望遠鏡を展示した。

 同校の地学部は天体観測に力を入れており,先輩部員が何台もの望遠鏡を製作している(Tech-On!関連記事)。同校がこれまで製作した天体望遠鏡のほとんどは,ミラー2枚とレンズ1枚だけというシンプルな構成のニュートン式望遠鏡である。ただ,ニュートン式望遠鏡は接眼部が鏡筒の前方にあり,望遠鏡の姿勢(観測したい方向)によって接眼部の高さが大きく上下する。このため,車いすに座ったまま観測することは難しかった。

 そこで,地学部のメンバーは,望遠鏡の姿勢によらず接眼部の高さが常に一定となるナスミス式望遠鏡を新たに製作することにした。接眼部の高さが常に一定であるため,車いすに座ったまま安全に観測できる。光景40cm,焦点距離は7.2m。主な材料は,学校の設備で加工できる木材とアルミニウムである。部品を切り出しボール盤で穴を空けるなどほとんどが手作業で,約1年がかりで完成させた。

 2010年7月22日,製作した望遠鏡で初めて,難病のため電動車いすを使用する同級生と天体観測をした。月のクレーターまでハッキリと見ることができた。車いすの同級生も大いに喜んでくれた。それは,地学部の女子高生たちが,自ら夢をかなえた瞬間だった。