40代になっても、まるで魔法を使ったかの如く美しい女性を表す言葉、「美魔女」。この言葉の流行が示す通り、「美しい40代を目指す女性」向けの市場が拡大している。

 光文社が発行する40代向け女性誌「美STORY」。美魔女という言葉の生みの親である同誌は、40代でも美しくあるための美容術などの企画を前面に打ち出す。創刊は昨年8月ながら、今年1~6月の実売部数は7万1681部を記録。新聞や雑誌の部数公査機構である日本ABC協会の「美容雑誌部門」で1位を獲得する人気ぶりだ。

 女性の憧れの的は、20代の若々しい女性モデルより、「美しく年を重ねていく女性」に傾きつつある。

 美魔女を目指す女性向けの商品も売れている。ワコールが発売する、ミドル世代を対象にした「ラゼ」シリーズの「胸もと年齢マイナス5歳をめざすブラ」が好調だ。

マイナス5歳ブラ、前年比倍増

 1枚7875円という価格は、ワコールのブラジャーの中でも高い部類に入る。同社のブラジャー全体の店頭売り上げは、2010年の4~9月期で前年同期比109%という状況の中で、マイナス5歳ブラは前年比207%の売り上げで、2万7500枚の販売を記録した。

 女性が下着を選ぶ際、デザインなど見た目を中心に、カップ数とアンダーバストのサイズから選ぶのが一般的だ。だが、20代向けにメーカーが開発した下着を40代が着けると、同じサイズでもジャストフィットしないことがあるという。加齢による体の変化を消費者が理解していないからだ。

 ワコールは自社の研究所で45年間にわたって延べ4万人を超える女性の体を調査・研究している。同社は今春、女性の体の変化のメカニズムを分析した結果を公表し、その結果に基づいた年齢に適す下着選びを推奨し、販売増につなげている。

 同研究所は「統計的に38歳で体形と体質の両面で曲がり角がくる」と分析。加齢により、胸はそげてたわみ、外に流れるという変化のステップを導き出した。同時に、乳腺組織が脂肪に変化することで、胸に張りがなくなることも解明した。

 20代向けの谷間を作るようなブラジャーは、胸に張りがある女性に向けて開発されているものだ。これを胸の張りが少ない女性が着けると、ブラジャーが持つ寄せようとする力を柔らかい脂肪が吸収してしまい、胸の上部まで伝わらない。

 そこで、張りがなく柔らかくなってしまった胸全体に力を伝えるため、ワコールはマイナス5歳ブラで内側にリフティングシートという1枚の大きな布をつけた。胸全体をハンモックのようにシートで支えて持ち上げることで、膨らみのあるバストを演出できる。胸の上部が膨らみを持つことで、若く見える効果がある。

 「バブルを経験し、自分に投資する世代である40代女性が増え、そんな女性に憧れる30代が増えているのでは」とワコールの総合企画室の猪熊敏博広告・ PR課長は語る。結婚や出産、子育てで自分への投資を控えてしまいがちな女性たち。団塊ジュニア世代が40代に突入しようとする今、市場は小さくない。女性の美魔女志向は、消費回復に向けた1つの起爆剤になるかもしれない。