エコカー補助金の終了から2カ月。新車販売の動向には暗雲が立ち込める一方、それまで沈んでいた中古車市場が、にわかに活気を取り戻しつつある。9月の中古車登録台数は前年同月比9.6%増。盛り上がる需要を取り込もうと、中古車ディーラーは新サービスの打ち出しに躍起だ。

中古車でもエコカーに人気が集まる(川崎市のオリックス自動車の拠点)

 川崎市内のオリックス自動車の中古車販売店には、平日から近隣の住民などが足を運ぶ。走行距離は5万kmに満たないものが多く、3~4年落ちの車両が大半を占めるが、価格には値頃感がある。例えば、2007年モデルのホンダ「フィット」は走行距離が1万8000kmながら、価格は69万8000円で、見た目の状態も良い。

 リースやレンタカーを主力事業とする同社は、販売用の中古車もすべてを「自前」で調達する。3年ほど使われたレンタカーやリースの車両は、定期的に修理点検が施されているため、品質も安定している。さらに仲介業者を挟まないため、「品質が良くても、価格は競合他社より1割ほど安い」(オリックス自動車)のだという。

 9月から開始した新たなキャンペーンでは、補助金給付の対象となっていた車両を中古車として販売する場合、3万~5万円を返金する。割安感のアピールで、ハイブリッド車や小型車の販売が急増。同社の9月の中古車販売台数は前年同月比65%増となった。

価格勝負からサービス重視に

 中古車好調の背景には、補助金終了によって割安感が再認識されたことや、それまでの新車販売の伸長で、市場に多くの商品が出回ったことがある。いわば、現在の好況は補助金の反動で生まれた、特需の側面が色濃い。

 こうした中、単なる価格勝負ではなく、サービスを根本から見直して、持続的な販売を目指す動きも広がっている。

 中古車販売大手のガリバーインターナショナルは家族客開拓のため、「ママとクルマの研究所」を設立。今年5月から子持ちの主婦を対象としたマーケティングに着手した。一部の店舗では、子供の成長で不要になったチャイルドシートやベビーカーの買い取りを開始。店舗もキッズコーナーを拡大するなど、主婦の声を反映し、来店機会の増加を狙っている。

 同社は昨年秋にダスキンと業務提携して、車内の清掃・除菌サービスをスタートしており、こちらも好評という。

 さらに今月16日からは販売手法の拡大として、ネットと電話による中古車通販を始める。約6000台の在庫から検索した中古車をオペレーターとの電話やメールによる商談だけで購入できるようにする。

 中小の中古車販売業者でも目を引くサービスが出始めた。北九州市で中古車販売や車両整備を手がける城野レーシングは、中古車を電気自動車に改造して販売するサービスを展開する。

 例えば、日産自動車の「マーチ」の場合、約150万円の費用でエンジンをモーターとバッテリーに換装すると、最大60kmほどの走行が可能な電気自動車が出来上がる。車検登録を含め、引き渡しまでには2カ月近くを要するが、電気自動車であるために重量税が免税となるメリットが生まれる。

 販売実績はまだ数台にとどまっているものの、技術供与に対する問い合わせが急増しており、他社を通じた事業の拡大を検討している。

 本来、価格面での敷居の低さは、中古車の最大の特徴であり、長引く不況下では大きな武器になる。ただ、長期低迷も予想される国内市場では、価格競争だけに陥らない、もう一工夫が中古車業界の今後の明暗を分けることになりそうだ。