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学生記者の田中さん(左)と雨宮さん(右)

 理系学生が企業を取材し,学生目線で記事を執筆し,その業界の良さをレポートする今回の企画。3人の学生記者に集まってもらって6月に開催したレクチャ(連載第1回目の記事を参照)から約1カ月後,いよいよ最初の企業取材の日が訪れた。

 今回取材するのは,東京エレクトロンのエッチング装置の開発現場だ。エッチングとは,簡単に言うと,シリコン基板上にトランジスタなどの素子を構成する薄膜パターンを形成する技術である。決まったパターンに沿って,薄膜を削り取る。

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学生記者のインタビューに答えてくれた中川さん

 半導体プロセスは年々微細化が進んでいる。そこで,これまで実現できなかったような深い溝や穴を速く均一に削り取ることを目指して,エッチング装置開発のエンジニアは日夜奮闘している。こうしたエンジニアが活躍している現場を訪問し,生の声を聞いたり,実際の開発の様子を見たりすることで,半導体製造装置業界で働く魅力を探った。

 参加した学生記者は,田中文さん(東京大学大学院工学系研究科バイオエンジニアリング専攻(機械系)修士2年)と雨宮美沙さん(上智大学電気電子工学科4年)。いずれも「業界をきちんと調べたい」「ものづくりの現場を見たい」という意欲にあふれた学生記者だ。朝7時40分に東京・新宿駅に集合し,いざ,緑豊かな山梨県韮崎市にある東京エレクトロンのエッチング装置の開発現場に向かった。

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クリーンスーツに着替えて,いよいよクリーンルームの中へ!

 エッチング装置の開発現場では要素技術の開発が中心であるため,エッチング装置全体を把握することが難しい。そこで,最初にエッチング装置の量産工場を見学し,装置全体のイメージを目に焼き付けた。併せて,半導体製造装置業界と東京エレクトロンについてのレクチャを受けた。その後,社員食堂に案内してもらい,開発現場で働く皆さんと同じ空間で昼食をいただく。

 午後は,いよいよエッチング装置の開発現場の取材。まず,現役バリバリのエンジニアである中川顕さんから,最先端のエッチング装置開発についてレクチャを受けた。二人の学生記者からも矢継ぎ早に質問が飛ぶ。「それは良い質問ですね」――中川さんも思わず感心する鋭い質問が相次いだ。これに対し,中川さんも学生記者の質問の意図をくみ取り,優しく丁寧に答えてくれた。

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今回は2カ所のクリーンルームを見学した。
この写真は,中長期的なテーマの研究開発をしているクリーンルームである。もう一つ見学したのは,早期の実用化を目指して短期的なテーマの研究開発をしているクリーンルーム。ちなみに,もう一方のクリーンスーツは白色だった。

 そして,今回のメイン・イベントであるクリーンルーム内の見学取材へ――。

 中川さんの案内のもと,クリーンスーツに着替えてエアシャワーを浴び,クリーンルームに入る。大きな箱のような半導体製造装置が整然と並び,人がほとんどいなくて自動搬送車が行き交う半導体工場のクリーンルームとは全く違い,大学の研究室のようにあちこちに装置が置かれ,大勢の人が手を動かしている開発現場が,そこにはあった。

 クリーンルーム見学取材で感じたことを胸に会議室に戻ってきた学生記者の二人は,再び中川さんに質問を浴びせる。予定していた時間はあっという間に終了し,急きょ時間を1時間近く延長するほど,取材は大いに盛り上がった。

 次ページ以降では,今回の見学取材をした学生記者2人のレポートを掲載する。

次ページで田中さんのレポートを紹介