最初に会社の活動内容を簡単にご紹介ください

キヤノン 人事本部採用センター担当部長 宮代 隆夫 氏
キヤノン 
人事本部採用センター担当部長
宮代 隆夫 氏
写真:花井智子

宮代氏 キヤノンは1937年、「自分たちの手で世界一のカメラを作りたい」という技術者の夢からスタートしました。その後、事務機分野にも進出し、創立30周年を迎えた1967年には「右手にカメラ、左手に事務機」をスローガンに多角化を推進し、1970年には普通紙複写機の製品化を日本で初めて実現しました。

 現在の売上構成は、約半分が複合機やレーザープリンター、大判インクジェットプリンターなどのオフィス製品、約4割がカメラやインクジェットプリンターなどのコンシューマ製品、そして残りの約1割が半導体露光装置などの産業機器となっています。

現場で活躍しているエンジニアに共通点はあるでしょうか

宮代氏 キヤノンでは「三自の精神」と呼ぶ行動指針を重要視しており、この「三自の精神」を備えている人が活躍しているように思います。「三自の精神」とは「自発・自治・自覚」から成り立っており、自発とは何事にも自ら進んで積極的に行うことで、個人でも動けるということです。自治とは自分自身を管理することで、計画やロードマップをきちんと守ることにつながります。そして自覚とは自分が置かれている立場・役割・状況を認識することです。組織の中で自分のやるべき仕事をこなすためには必須となります。

 キヤノンは風通しの良い社風を持っており、社内では年齢や学歴など関係なく議論が行われています。その分、若い人たちにも、自分で考えて判断し行動することが求められます。このため「三自の精神」を備えている人が、エンジニアとして開発をリードすることができます。

キヤノン 人事本部採用センター担当部長 中村 真一 氏
キヤノン 
人事本部採用センター担当部長
中村 真一 氏
写真:花井智子

中村氏 キヤノンはメーカーですから、製品や開発に強い思い入れを持っていますが、エンジニアとしては自分の思いをうまく理解してもらう能力を持った人が活躍しています。私はもともと複写機の開発センターに所属していましたが、製品の開発は一人ではできません。同じ開発部門の仲間たちはもちろん、試作、製造、販売、メンテナンスなど様々な部署の協力があって最終的な製品が生まれます。いろいろな部門のプロに自分の思いを伝えられる人が、実際の製品や技術の開発を引っ張っていますね。

宮代氏 独自技術にこだわり続けられることも重要な要素です。先ほどもお話したように、キヤノンのスタートは、「絶対に自分たちの手で高級カメラを作る」という技術者のこだわりでした。業容の多角化で事務機分野に進出する際にも、他社のまねではなく自社開発にこだわりました。進取の気性を持ち、常に新しいことに挑戦し続けることが、キヤノンのDNAには刻まれています。

 知的財産も重視しており、開発現場には特許を出願することが強く求められています。昨年の米国特許登録件数は日本企業ではトップとなっています。このように自発性を重んじるキヤノンでは、技術開発に対して「絶対に成し遂げる」という気概を持った技術者が活躍しています。

どのような学生と一緒に働きたいですか

宮代氏 ものづくりが好きであったり、チャレンジ精神が旺盛であったりなど、学生に対する要望は幾つもあります。しかし、これまで様々な方々を採用してきて、一番重視したいことは「キヤノンが好き」であることです。学生の皆さん、特に理系の方々は、「自分が学生時代に勉強してきたことを社会に役立てたい」という要望をお持ちの方々が多いのですが、就職後は、本人がこれまで携わってきたものとは異なる内容に従事してもらうことが少なくありません。また、入社当初は希望通りの職務に就けたとしても、ローテーションにより数年後には違った職務になるケースもあります。

 そのような場合に、「もう会社を辞めたい」、となってしまうことは、社員にとっても、そしてキヤノンにとっても、望ましいことではありません。自分の立場と役割をしっかりと自覚し、三自の精神を発揮して好きなキヤノンのために頑張ろう、という姿勢で臨んで欲しいのです。

 研究室で仲間とともに研鑽を積んできた人は、ものの考え方、進め方がしっかりとしています。そのような経験は、特に研究職に就いた場合は、必ず活きます。

今後のものづくりを引っ張っていくにはどのような視点が必要ですか

中村氏 これからはものづくりにおいても、グローバルな視点が欠かせません。特に中国や東南アジアをはじめとする新興国の需要は旺盛であり、今後ますます拡大していくでしょう。国や地域が異なれば、言語や習慣、文化も違い、当然製品の使用環境も異なります。製品がどのようなシーンで利用されるのかを考え、そして開発につなげていくことが必要です。

 キヤノンには"現地現物主義"という言葉があります。頭で考えるだけでなく、実際に現場に足を運び自分自身で見て触れて感じたことをもとに、判断し、対応するという考え方です。そういった意味では、何に対しても興味を持つ好奇心と、どこにでも物怖じせずに出て行く積極性が重要となってくるでしょう。

宮代氏 キヤノンの連結売上高に占める海外売上比率は約8割となっています。販売網もグローバルに展開しており、各国のニーズに即した製品の開発ができれば、この販売網はさらに活きたものになります。ですから若い技術者の方には是非、世界で勝負できる製品を開発してほしいと思います。

もし、学生時代にやっておいたら良いだろう、ということがあれば教えてください。

キヤノン 人事本部採用センター担当部長 宮代 隆夫 氏
写真:花井智子

宮代氏 自分として「これをやった」と自信を持って言えるものを、一つでも持ってほしいです。勉強以外のサークル活動や学内活動でも構いません。これだけは一生懸命、自信を持ってやってきたんだ、というものがあればよいと思います。

 キヤノンでは、求める人物像として「来たれ、開拓者」というキャッチフレーズを掲げています。開拓者とは、新しい道を情熱をもって自分で切り拓ける人、を意味します。自分が没頭できるものに全力投球してきた人は、開拓者になれる可能性も高いと思っています。

中村氏 学生時代は、自分のための時間が多くあるはずです。まずは悔いのないように生活することが第一ですが、就職前に、これまでの人生を一度振り返ってまとめてみるのはどうでしょうか。おそらく、これまでに何度か壁にぶつかったことがあるはずです。そのようなときに、自分はどのような考えを抱き、そしてどのように行動したのか。そのときに、自分がたどったプロセスは、その後の会社生活にも、きっと役に立つと思います。