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編集長からの手紙

中国発の世界標準が市場を席巻する日

  • 浅見 直樹=電子・機械局長
  • 2010/05/10 15:00
  • 1/2ページ

 さて、連載2回目の今回は、標準技術に関する日本と中国の関係を考えてみよう(第1回はこちら)。

 標準技術には、「業界標準(デファクト・スタンダード)」と「国際標準(デジュール・スタンダード)」の二つがある。デファクト・スタンダードとは、だれかが標準技術として正式に認定したわけではないが、その技術が大きな市場シェアを獲得し、事実上の標準として広く普及した技術を指す。例えば、インテル社のCPUであるとか、マイクロソフト社のパソコン用OSだとか、グーグル社の検索エンジンなどが代表例である。

 コンピュータ業界では、こうした業界標準が多く存在する。ひとたび業界標準の座を勝ち得ると、中長期にわたって安定的に事業を展開できるという強みがある。マイクロソフト社は、業界標準のパソコン用OSを糧に、アプリケーション・ソフトウエアの領域でも、Word/Excel/PowerPoint/IE(Internet Explorer)は莫大な市場シェアを誇っている。一般に、米国企業は業界標準を生み出すのが得意であり、日本企業は不得手とされる。日本企業が業界標準を握っていたのは、ゲーム機くらいのものだろうか。かつて任天堂とソニーがゲーム機市場を二分していた時代もあったが、今ではマイクロソフト社がXboxでこの市場に割って入っており、特定企業の技術が圧倒的な市場シェアを獲得できている状況にはない。

 これに対して、通信・放送業界においては、業界標準はなじみにくい。通信方式にしても、放送方式にしても、複数の装置あるいは多様な端末がつながるからこそ意味がある。より多くの機器を接続するために、その接続方式は多くの企業が協議することによって取り決めるのが一般的である。「IEEE」「ANSI」「ISO」など、標準化機構において議論を重ね、標準技術を選定する。「Ethernet」「WiFi」などが例として挙げられる。

日本人、顔は出すが、口は出さず

 日本企業は標準化活動に対してどう貢献してきたのだろうか。1980年代から日本のエンジニアも国際的な標準化委員会に積極的に参加してきた、というか、顔を出してきた。欧米企業が策定した標準技術に準拠した製品をいち早く、しかも高品質かつ低価格で市場に投入することが日本企業の強みだったからだ。しかし、こうした日本企業の姿勢は欧米企業から強く批判されることになった。「日本企業は、標準技術に関する情報を収集するばかりで、標準技術を提案する姿勢がみられない」と、何度となくとがめられた。確かにそうだった。決して、情報を盗むために標準化委員会に出ていたわけではないが、欧米のエンジニアを相手に、英語で技術論争を繰り広げるのは簡単なことではない。島国の日本で育ったエンジニアにとって、標準技術の提案は極めてハードルの高い難題だった。

 欧米のエンジニアは、ディベートに長けている。自分を主張することが「よし」とされる国民性を背景に育った彼らを相手に、おくゆかしい日本のエンジニアが尻込みする局面は多々あったことだろう。日本人のこの控えめな姿勢が、欧米企業からの日本バッシングの対象となったのである。

 標準化活動における日本企業の貢献が少なかったのには、もう一つ理由がありそうだ。それは、コンピュータ/通信業界を中心に、標準化活動が展開されたからである。前回の記事でも紹介したとおり、日本の電子産業は、米国のコンピュータ産業の成長に牽引されて、力をつけてきた。IBM社のメインフレーム・コンピュータ技術をこぞって日本のエレクトロニクス企業がまねたのが、象徴的といえる。米国企業のお家芸だったコンピュータ/通信技術において、これまた欧米人の母国語である英語によって、技術論争をディベートするのだから、日本人エンジニアが気後れしたのも、やむを得まい。

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