少し前の話になりますが,3月17~20日の応用物理学会 学術講演会の会場の一角で,初日午後に開催されたイベント「博士のキャリア相談会」を見て来ました。応用物理学会が招へいしたキャリアアドバイザーや企業・研究機関の相談員が,学生のキャリア設計,就職,進学に関して,あらゆる相談に乗ってくれるというものです。

 応物学会に聞くと,この企画は今回で3回目になるとのこと。調べてみると,他の学会でも,学生のキャリア支援に関するイベントを開催しているようです。もう15年以上も前のことですが,筆者が学生のころは,こうした企画はなかったように思います。時代が変わって,学生の悩みが増えているのか。厳しい就職活動など今の学生の悩みに関するニュースはたびたび耳に入ってきますが,「ぜひ現場を見て体感してこよう」と思い立ち,会場の東海大学湘南キャンパスに向かいました。

 実際に会場に行ってみると,知らなかったことや想像していなかったことばかりで,驚きの連続でした。

200人もの学生が訪れる

 まず驚いたのが,参加者の数です。「博士のキャリア相談会」というイベント名が示すように,この企画は主に博士課程学生のための相談会です。博士課程への進学者はそれほど多くはありません。しかも学術講演会への参加登録者限定のイベントで,開催時間は14~18時のわずか4時間です。学術講演会に参加登録した学生の目的は,何といっても学会発表です。キャリア相談会に立ち寄る学生は,数十人程度だろうと想像していました。

キャリア相談会
キャリア相談会の様子

 ところが,会場に行ってみると,意外に多くの学生が出入りしていることに驚かされました。キャリア相談会に対するニーズは意外に強い,と肌で感じました。過去2回は,いずれも200人もの学生が参加したとのこと。相談に乗ってくれるキャリアアドバイザーや企業・研究機関の相談員の中にも,博士課程を修了した人が数多くいます。博士課程のOB・OGが実際にどのような仕事をしているのか,現役の学生にとっては大いに関心があるようです。

 「学部や修士課程の学生にはない難しさがある」。博士課程の学生の就職について,本イベントの企画担当者である応用物理学会 人材育成・男女共同参画委員会副委員長の中村淳さん(電気通信大学 電気通信学部 電子工学科 准教授)は言います。そもそも博士課程の学生を対象とした求人数が少ない上に,研究室の教授の個人的な人脈で就職を決めていたOB・OGが多く,現役の学生にとって参考になる事例が少ないことが,博士課程の学生の就活を難しくしているそうです。「博士課程の学生の就活については,統計すらない状況です」と,中村さんは打ち明けます。

 さらに,会場内には,博士課程への進学を検討している修士課程の学生の参加者もたくさんいました。「キャリア相談会は春と秋に開催していますが,特に秋のイベントでは参加者の約半分が修士課程の学生です」(中村さん)とのこと。博士課程を修了した後の就職やキャリア設計に関する相談が多いそうです。

東芝,ソニー,日立……,有名企業がこぞって参加