現代流の「読み・書き・そろばん」とは(第1回)
私には、この春、高校三年生になる息子がいる。学校では、第二外国語として中国語を学んでいるという。時折、家でなにやら中国語の単語を発音している。私が英語以外の言語を学ぶようになったのは大学に入ってからのことだった。それからみれば、今は国際化が進んでいるのだろうか。当時、第二外国語といえば理系ならドイツ語、文系ならフランス語が定番だった。それ以外の言語を第二外国語として選択する学生は、極めてまれだった。この四半世紀で、グローバル化という言葉の意味合いも随分と変わってきたものだ。高校生でも中国を身近に感じるようになったとは隔世の感がある。
江戸時代には、「読み・書き・そろばん」が学問の基礎となっていた。私が大学生のころ、社会人の先輩から、「今流の読み・書き・そろばんとは、“英語(論文を読み、海外の情報を入手すること)”と“プレゼン(論文を書くだけでなく、人前で説明すること。つまり説得力)”、それに“コンピュータ”」だと教わった。その通りだと、当時、思った。英語とコンピュータに対して苦手意識をもつことは、社会人として弱みになるんだと、学生ながらにして危機感を覚えた。
では今ではどうか。現代版の「読み・書き・そろばん」とは何だろう。英語をしゃべれること、人前でプレゼンすること、そしてコンピュータを操ることは、どの社会人にも、できて当たり前の基礎能力となっている。これからの社会人は、それだけでは足りない。今の若い人にとっての「そろばん」とは、単にパソコンを使いこなすのみならず、モバイル機器を駆使し、SNSやツイッターなどの新メディアを駆使することをさすのだろう。そして「読み」「書き」については、英語に加えて、中国語という要素が多分に入ってくるはずだ。日本の産業界において、それほど中国の存在感は増しつつある。
そこで、今回から3回にわたり、日本と中国の関係について考えてみることにする。
物マネ文化は日本のお家芸
電機・自動車の分野における産業競争力という観点から、中国は日本の何年くらい後ろを歩んでいるのだろうか。その差は確実に縮まっている。そして、いつか併走し、あるいは日本が中国を追いかける立場に立つ日が訪れるのだろうか。
2001年にWTO(世界貿易機関)に加盟した中国は、「世界の工場」と言われるようになった。しかし日本も、1980年代にさかのぼれば、テレビをはじめとする家電製品やDRAMなどにおいて世界市場を席巻していた時代がある。製品の品質の高さが評価され、日本は「ものづくり大国」として世界で認知されていた。そして今や中国は、「製造力」という意味で日本企業を着実に射程圏内にとらえつつある。その中国では、さまざまな模倣品が製造され、販売されている。かねて、特許使用料を支払わずに安価なDVDプレーヤーを世界で発売し、先進国から「模倣大国」として少なからぬ非難を浴びたことがある。DVDプレーヤーについては、中国企業も特許使用料を支払うことで一件落着したが、その後も、雨後のタケノコのごとく、模倣品・類似品が生まれている。iPhoneならぬ、Ophoneまで登場し、携帯電話機業界でも、中国の物マネぶりが話題となっている。
ただ、日本もかつてはどうだったろうか。今でこそ、日本はオリジナリティーのある斬新な電気製品や自動車を生み出しているが、1980年代はひたすら、米国が生み出したアイデアを追いかけまわしていたのである。コンピュータしかり、半導体しかり、民生機器しかり、通信機器しかり、である。私が駆け出しの記者だった1980年代半ば、米国の雑誌や学会誌を日本の技術者はむさぼるように読みあさっていた。英語の論文をかかえて技術者のところに足を運び、技術談義を重ねたことが何度となくあったのを覚えている。
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