苫小牧高専の「ヘッドホンヴァーチャルサウンド再生システム」のデモ
苫小牧高専の「ヘッドホンヴァーチャルサウンド再生システム」のデモ
[画像のクリックで拡大表示]
DSPを搭載した小さなボード上で実現
DSPを搭載した小さなボード上で実現
[画像のクリックで拡大表示]

 ヘッドホン再生でありながら,あたかもスピーカから音を聞いているような感覚が得られる。このような装置を,「セミコン・ジャパン2009」(12月2~4日,幕張メッセ)の高等専門学校(高専)特設ブース「The高専@SEMICON Japan 2009」で,苫小牧工業高等専門学校が展示した。DSPを搭載した小さなボード上で実現している。同校は展示会場に実機を持ち込み,臨場感あふれる音楽を来場者に聞いてもらうなどのデモを実施していた。

 ヘッドホン再生時に,耳元ではなく,少し離れたスピーカから音を聞いたような感覚を与える技術は古くからあり,頭外音像定位と呼ばれている。ヘッドホンで音を聞いた時の耳元での音波が,スピーカで聞いた時と等しくなるように,音響信号処理をする。

 音響信号処理の考え方は,人間が音の方向(音源の位置)を判断する仕組みを利用したものである。人は,左右の耳では,音が届くまでの時間や感じる音の強さが違うことなどを利用して,音源の位置を判断している。例えば,右の方で鳴っている音は,左耳よりも右耳に少し早く届く。また,右耳が感じる音量の方が,左耳が感じる音量よりも大きい。つまり,左耳よりも右耳で早く音をキャッチしたり,大きな音をキャッチしたりした時に,人間は「右の方で音が鳴っている」と判断するのである。

 このような“音の聞こえ方から音源の位置を判断する人間の仕組み”を利用して音響信号処理をすれば,耳元のヘッドホンからの音を基に,視線の先の少し離れた場所にあるスピーカからの音を作り出すことができる。同校は今回,通常の音楽データを再生しながら,DSPを使ってリアルタイムにデジタル信号処理し,この信号処理された音楽をヘッドホンで視聴できるようにしていた。