熊本高専が展示したシステムと,開発した松永英也さん
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 あたかも自分が運転席に乗車しているかのように,加減速時の加速度や,コーナリングでの遠心力を感じながら,模型のクルマを遠隔操縦できる。このようなシステムを,「セミコン・ジャパン2009」(12月2~4日,幕張メッセ)の高等専門学校(高専)特設ブース「The高専@SEMICON Japan 2009」で,熊本高等専門学校が展示した。同校は展示会場に実機を持ち込み,実際に模型のクルマを走らせたり,来場者に操縦してもらったりしていた。

 このシステムでは,ラジコン・カーのように,模型のクルマを遠隔操縦する。ただ,コントローラを手に持って操縦するのではなく,自動車の運転席を再現した操縦席に座ってアクセル,ブレーキ,ハンドルなどを操作する。アクセルやハンドルの操作,模型のクルマの動きに応じて操縦席のシートが前後左右に傾くことで,加速や減速,コーナリングなどを体感できるようにした。操縦席の前にはディスプレイがあり,模型のクルマに搭載したカメラによる映像や,スピード・メーターなどの計器類を見ることができる。計器類には,模型のクルマの動きに応じた走行スピードなどが表示される。

 操縦者がアクセルやハンドルを操作すると,その情報がパソコンに伝わり,パソコンが模型のクルマを操作通りに動かすための制御情報を演算する。その制御情報を無線LANで模型のクルマに送信し,クルマを動かす。模型のクルマには小型コンピュータ,カメラ,加速度センサが搭載されており,小型コンピュータで無線通信やモータの制御などをしている。模型のクルマのカメラで撮影した映像や,加速度センサで検知した情報は,無線LANでシステムのパソコンに送信する。パソコンでは,模型のクルマから受信した加速度情報を,操縦席の振動を再現するための情報に変換する。その振動情報に従って,操縦席のシートを前後左右に傾けることで,操縦者が加速や減速,遠心力を体感できるようにしている。

動画 模型のクルマに乗車している感覚で操縦(約34秒の動画)
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実際のエンジン車の動きに,できる限り近づける

 模型のクルマや操縦席の制御にあたっては,ただ単に動かすだけではなく,できる限り実際のエンジン車での動きに近づけることを目指した。

 例えば,クルマを発進させようとアクセルを踏み込んだ時に,クルマが徐々に加速していく様子を再現した。単純にアクセル開度に従ってモータの回転数を上げると,もっと短時間にクルマが加速してしまう。そこで,シフトとアクセル開度からエンジン出力をシミュレートし,これを再現するためのモータの電流値を求めて,モータの回転数を制御するようにした。シフト・チェンジしないと,スピードがなかなか出ないようにもなっている。また,クルマが走り出すと,ハンドルが自然と真ん中に戻る動きも再現している。