「リーマン・ショック」から1年,世界的な不況は底を脱し,日本の製造業が元気を取り戻し始めている。経済産業省が毎月発表している製造工業生産予測指数によると,10月時点ではまだ2008年秋以前の水準には戻っていないが,回復基調にある。

 その製造業を支えるのは,言うまでもなく技術者だ。景気動向の影響を受け,一時的に厳しい現実にさらされている業種もあるが,中~長期的な視点で見ると,技術者が活躍できる場は,実はこれまで以上に大きく広がりつつある。代表的な分野としては,自動車や医療/健康,環境/エネルギー,デジタル家電などが挙げられる。

底を脱した製造業
底を脱した製造業
経済産業省が2009年8月末に発表した製造工業生産予測指数では,2009年8月,9月とも上昇を予測する。「総じてみれば,生産は持ち直しの動きで推移している」という。(図:製造工業生産予測調査のデータを基に日経エレクトロニクスが作成。2009年8月は見込み,9月は予測)

製品開発では技術の融合がカギ

 例えば,自動車は安全性や快適性などを高めるために,電子化が加速している。クルマ1台のコストを見ると,ハイブリッド車ではもう半分ぐらいが電子部品のコストになっている。エレクトロニクス技術者からすれば,これまで機械仕掛けだったクルマが電気仕掛けへと変わりつつあることで,自動車という大きなフィールドが登場したことになる。

 また,健康に対する人々の意識が高まる中,医療/健康分野でも各種技術の本格的な利用が始まっている。医療/健康機器というと,病院で使われる大型医療機器とか,家庭にも置かれている血圧計のような機器などを思い浮かべるかもしれないが,任天堂のゲーム機「Wii Fit」のような製品も健康機器の一つと言えるかもしれない。こういった機器では,エレクトロニクスをはじめとする様々な先端技術が搭載されている。

 環境/エネルギー分野も,世界的に今後大きく成長する分野である。国内では民主党が「温室効果ガスを2020年までに1990年比で25%削減する」という目標を打ち出し,米国ではオバマ政権が次世代電力網「スマートグリッド」を核に,エネルギーの高効率利用を推し進めている。いずれも太陽電池をはじめとするテクノロジーの活用なくして成し遂げることは難しいだろう。

 実際,多くのメーカーが環境/エネルギー事業に力を注ぎ始めている。日本の代表的なメーカーであるパナソニック社長の大坪文雄氏は「これからは環境を中核に据えて,新しい土俵をつくり,そこで戦っていく」と語っている。

 とりわけ日本メーカーの環境/エネルギー技術は世界的に見て,先行している。以前から省エネルギーをはじめとする環境対応技術の開発を積極的に進めてきたためである。日本メーカーが,今後も世界をリードできる可能性は高い。