「家に帰ると寂しい」「狭いキッチンや浴室の使い勝手が悪い」。ワンルームマンションで一人暮らしをする人にとってこんな悩みは尽きない。そこで人気を得ているのがシェアハウスだ。他人とキッチンや浴室を共同で使用することで、広いスペースを使うことができる。

 これまでも友人同士が共同で家を借りたり、家賃を安く抑えたいから複数人で住むという形態は多く取られてきた。ただ、このシェアハウスは、これまでの共同住宅とは様相が違う。

シアタールームやフィットネスも

 キッチンやリビングは広いだけではなく、様々な設備が用意されている。東京電力の子会社、リビタが運営する「シェアプレイス読売ランド」は、リビングルームには大型テレビやソファが設置。隣室にはビリヤード台もが置かれ、シアタールームや簡単なフィットネスジムまである。

シェアプレイス読売ランド
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 そのうえ入居者は冷蔵庫や洗濯機、乾燥機といった大型家電を用意する必要はない。シェアハウスを運営するリビタがあらかじめ用意しているからだ。清掃、維持まで請け負っている。

 これだけ設備が充実していても、家賃は1室6畳程度で5万円から9万円程度。相場と比べて決して高くはない。そのうえ、リビタが展開するシェアハウスは敷金、礼金も不要だ。

 「他人と共同生活をすることで、一人暮らしでは得られない様々なメリットを享受することができる。コミュニティーを広げることができるのもその1つだ」とリビタで、シェアハウス事業を担当するコンサルティング事業本部プロパティマネジメントグループ菊地敬治マネージャーは言う。週末ともなれば、居住者同士で飲み会やパーティーが開催されることも多い。こうしたシェアハウスの魅力が口コミで広がり、新規物件には申し込みが殺到している。

「シェ・モア飯田橋」は女性専用
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 「利用者の6割は女性。一人暮らしだとセキュリティーに不安があるからと、利用する人もいる」とサイト上でシェアハウスを紹介するひつじ不動産を運営するひつじインキュベーション・スクエアの北川大祐社長は言う。ひつじ不動産では現在の紹介物件数は502件。前年に比べ、200件近く増えている。

 リビタでは既に5軒のシェアハウスを展開しているが、毎年4軒程度増やす考えだ。

おしゃれな「バウハウス南千住」
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独身寮を「リサイクル」

 実はシェアハウスは、居住者だけでなく、運営する事業者にとってもメリットがあるということも、増え続ける要因の1つだ。

 シェアハウスの多くはマンションや企業が持つ独身寮を再利用している。シェアハウスとして改築した場合、一人ひとりの部屋に水回りの設備が不要となるため、一般的なマンションとするよりもコストが抑えられる。共用スペースに投資をしてもなお、初期コストは低い。

 最近では、景気の悪化に伴い、独身寮を手放す企業が増えてきた。シェアハウスへ追い風となっていることは間違いない。「最近の若者はコミュニケーションが苦手」。とかくこんな話が報じられている。シェアハウスはこうした既成概念にとらわれていては、生まれなかったサービスだ。