2009年9月中間期決算に関する報道の中で、2010年3月期通期の業績予想を上方修正する企業が相次いでいます。しかし、雇用情勢などは決して良くなっていませんし、「ジョブレス・リカバリー」という形で巻き返しを狙う企業も少なくありません。景気の先行きはなお予断を許さない状況だと思います。

 業績の回復を狙う企業の中には、「本業を強化して、中長期的に企業体質を筋肉質にしていきたい」といったことを言うところもあります。ただ先日、ある経営者に「私は『本業を強化する』という言い方は好きではないし、おかしいとさえ思います」と言われて、ハッとしました。

 企業側がよくよく深く考えることなく、現在の売上比率が最も高い事業が引き続き「本業」になると安易に規定し、今後の戦略についてもそれを「強化する」ということばかりを強調することは、サプライ・サイドの視点に立っている証拠だと言うのです。何を本業と位置づけていくべきなのかは、顧客のニーズから判断すべきであり、先に企業側が決めつけるべきではない。普段から「顧客本位」と言っている企業であれば、なおさらという訳です。

 確かに「大転換期」といわれるこの時代ですから、先々は何がマーケットに受け入れられ、顧客が何を支持するかということは、従来の常識で判断したら見誤る可能性が高まっているのでしょう。この経営者は、「大転換期とは、従来の主役が脇役になり、従来の脇役が主役になる時代」と定義しています。何も企業や事業分野だけのことではなく、官僚と政治家で主役が交代するとか、草食な男子が脇役になって肉食な女子が主役になる(既になっている?)とか、いろいろな変転が考えられると思います。

生き残れるのは、変化に対応できる種

 日経ビジネスでは10月12日号で、「不滅の永続企業」というタイトルの特集を掲載しました。そこで企業が永続する条件として打ち出したキーワードは、「変態」ということです。企業が長きにわたって生き残っていくためには、売上高やシェアを拡大することでも利益率を高めることでもなく、時代の変化に即応して自らの業態、事業分野、ビジネス・モデルを変化させていくことこそが欠かせないということです。

 テルモの和地孝会長は、「生き残る種とは、賢い種でもなければ強い種でもない。唯一、生き残るのは変化に対応できる種だ」というダーウィンの言葉を引き合いに、「経営も全く同じこと」と言っています。いくら図体ばかり大きくなっても時代に対応して変態できない企業は滅んでしまうわけで、米General Motors Corp.(GM)などはその象徴といえるでしょう。