中国経済の目を見張る回復ぶりが相次いで報じられています。中国国家統計局が10月22日に発表した7~9月の国内総生産(GDP)は前年同期に比べて実質8.9%成長となり、1~3月の6.1%、4~6月の7.9%から伸び率が一段と拡大しました。今年通年の新車販売台数は米国を、自動車生産台数は日本をそれぞれ抜いて世界1位になることもほぼ確実な情勢になっています。

 「中国の自動車市場を拡大させている主因は、大都市部の“1級市場”よりも、地方や農村部の“2級、3級市場”の活気にある」。10月20日に開催された「東京国際自動車会議(日経ビジネス主催)」では、来日した中国の自動車関係者からこうした発言が相次ぎ、中国市場の広がりと深さが改めて浮き彫りになりました。

 もちろん、新聞などでは「巨額の公共投資による景気刺激策頼みの構図にもろさがある」といった指摘もされています。しかし、景気刺激策によって実需が本格的に点火していない懸念や、膨れ上がった国債などの不安については、米国や日本の方がさらに根強いわけで、相対的に見れば、やはり中国の回復ぶりが際立っていると言えるでしょう。

 GDPで日本が中国に抜かれて「世界第2位」の地位から陥落するのも時間の問題で、経済面では名実ともに日本は中国の後塵を拝することになるのは明らかです。この事実は厳粛に、冷徹に認めなければならないと思います。ただ、「そうは言っても…」と思う日本人がおそらく多いのは、中国人の立ち振る舞いや文化・習慣に根差した言動に違和感を覚えるケースが少なくないからでしょう。

果たして「上から目線」に足る存在なのか

 10月23日に開いたセミナー「中国進出を成功に導くCSR戦略」(日経ビジネス・企業研究会共催)では、中国の現地工場で中国人従業員に対して教育・研修を実施する場合、「ごくごく基本的な整理整頓などについても、その都度言わないとやってくれない」といった経験がいくつも報告されました。日本人からすれば、子どもに躾をしているような内容とも言えます。

 北京五輪が開かれる前、中国のテレビで再三にわたって放映された当局のCMには、「外国から五輪を観戦に訪れる人々に心配りをしましょう」というメッセージが込められていたのですが、これもまた子どもに注意をするような内容ばかり。エレベータの乗り降りのマナー、道を譲る、机の端で落ちそうになっているコップの位置をずらしてあげる…といった具合です。

 こういう実態があるからこそ、たとえ経済的には中国に抜かれたとしても、日本はどこか「上から目線」で中国を見るところが残っているのではないでしょうか。「我々の方が人間として、できている」と。確かに、前回のこのコラムで書いたような「もてなしの心」では日本は世界に誇れる素晴らしいものを持っているでしょう。でも、日本、あるいは日本人は全体として、どこまで世界に誇れる存在なのでしょうか。