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70日間、鮮度が落ちない醤油

秘密は酸化を防ぐ新容器

蛯谷 敏=日経ビジネス
2009/09/30 00:00
出典:日経ビジネス、2009年9月14日号 、p.87 (記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
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 日本を代表する調味料・醤油。どの家庭の食卓にも並ぶコモディティー商品が、容器の技術革新によって大きな進化を遂げている。

 「醤油って、こんなに風味があったの」「煮物の味が全然変わった」…。ヤマサ醤油が8月24日に発売した「ヤマサ 鮮度の一滴 特選しょうゆ」。使用した主婦からは、一様に驚きの声が上がる。発売前から反響は大きく、首都圏の大型ショッピングセンターからも引き合いが殺到。当初は首都圏限定の販売にもかかわらず、年内販売100万本を目指している。

従来は1カ月が限度

 この新商品、秘密は「鮮度」にある。醤油の色や風味を、従来商品よりも1カ月以上保持できるのだ。

 当然だが、醤油は工場から出荷されたばかりが一番おいしい。醤油メーカー各社は、鮮度維持に工夫を凝らすが、現状では醤油の鮮度は「ペットボトルの容器の場合、開封してから1カ月程度が限度」とヤマサ醤油の藤村功・営業本部MD推進室長は言う。

 下の写真をご覧いただくとよく分かるように、品質自体に問題はないが、初め淡い色をしている醤油は、どす黒く変色し、味も劣化していく。

出来たては淡い色の醤油も、濃い黒色に
出来たては淡い色の醤油も、1カ月たつと、濃い黒色に変色する。香りや風味も劣化してしまう

 風味劣化の原因は、醤油が空気に触れることによる「酸化」にある。それを防ぐために、醤油を冷蔵庫で保管する消費者も多いが、本来はあまり望ましい保管方法ではない。「冷やすと、本来の醤油が持つ香りが立たない」と藤村氏は説明する。

あまり醤油を使わない、単身世帯もターゲット
容量は500ミリリットルで価格は273円。あまり醤油を使わない、単身世帯もターゲットにしている

 「酸化の進行を防ぎ、鮮度を保つことができないか」──。その思いから藤村氏が新型の醤油容器の開発を始めたのが、約7年前。試行錯誤の末に、ようやく完成したのが、新商品の最大の特徴となった、「いつでも開けたてパウチ」と呼ぶ容器である。

 特徴は、その注ぎ口だ。約2マイクロメートル(マイクロは100万分の1)の薄い膜で、ぴたりと閉じられた注ぎ口は、醤油を傾けるとその重さで口が開く。元に戻すと、膜と膜の隙間に醤油が浸透する「毛細管現象」によって、空気が容器の中に入らない。流体がある方向から逆方向へ流れようとするのを止める逆止弁のような働きをする。特許を申請中のため、詳細は解説できないが、開封した後も極力空気に触れない構造になっている。

「ペットボトルを置き換える」

 ヤマサ醤油と容器を共同開発したのは、液体の充填機などの開発を手がけている悠心というメーカーだ。5年前、社長の二瀬克規氏が学会に発表した新型容器の論文を藤村氏がたまたま目にしたのが出会いのきっかけだった。

 醤油は塩分を含んでいるため、空気に触れると塩の固まりができて、注ぎ口がふさがってしまう。これらの課題を一つひとつ克服して、現在の形にたどり着いた。

 この容器、大きな潜在能力を秘めている。ワインや化粧品など、醤油以外にも酸化防止効果の威力を発揮できる液体は、いくらでもある。現在、二瀬社長はこうした液体の容器としても使えるようにすべく開発中だ。プラスチック使用量もペットボトルの3分の1と、環境面でも優れている。当面の目標はペットボトル並みに普及させることだ。醤油容器のイノベーション(技術革新)が、飲料業界そのものを変える可能性もある。

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