前回に続き,シャープに入社した理由や,会社選びで大切なことについて,技術者として液晶パネル産業を立ち上げてきた元シャープ 常務取締役,フェロー(現FPDアソシエーツ代表)の枅川正也(ひじきがわ・まさや)氏に聞いた。

――シャープに入社した理由は。

枅川正也氏
枅川 正也(ひじきがわ・まさや)氏
1969年,シャープ入社。1999年に同社 常務取締役 液晶開発本部長,2003年に同社フェローに就任。現在はFPDアソシエーツの代表を務める。

 「ものづくりの遺伝子がシャープにはある」ということを,入社前に,強く認識していたからです。シャープ・ペンシルや鉱石ラジオを最初に実用化した会社ですし,白黒テレビの量産第1号機もシャープからでした。「シャープは新しいものを前向きにやっていく」という印象を,小さいときから持っていたのです。

 だから,入りたかった会社はシャープだけでした。入社試験も,シャープ以外に受けた会社はありません。シャープ1社に絞っていたところ,たまたまシャープが入れてくれたのです。

――入社して分かったシャープの良い点,問題点は。

 良い点は三つあります。一つは,常に新しいものに挑戦していく風土と遺伝子があること。二番目は,夢を具現化していくシステムを持っていること。能力のある者が組織の壁を越えて結集して,タスク・フォースを達成する「緊プロ(緊急プロジェクト)」がありました。三番目は,今も引き継がれていますが,雇用を守っていく経営姿勢です。

 問題点はあまりありませんでした。

――就職先を選ぶときには,何を基準にしたら良いでしょうか。

 自分がその会社に入ったときに,その会社の仕事に自分が熱中できるか。唯一,それだけを基準として会社を選んだら良いと思います。

 そのためには,そこの会社がどのような固有技術や独自技術を持っているのか。今,どのような技術を開発しようとしているのか。そして,その会社が目指している方向を知る必要があります。最近のニュース,その会社のニュース・リリースや学会発表などを,きちんと見なければ分かりません。今なら,例えばその会社が環境・エネルギー問題にどのような姿勢で取り組もうとしているのか。それを,しっかり調べると良いと思います。