――仲間と一緒に開発するのは楽しそうですね。

14型液晶
開発した14型液晶パネル

 仲間同士でものを作っていくことが,ものすごく大事です。互いに顔を合わせて,知恵を出し合っていかないと,ものづくりはできません。ある分野では非常に高い能力を持っている人はいますが,オールマイティな能力を持つ人はとても少ないものです。だから,専門的な能力を持っている人が集まり,それぞれ自分の得意な能力を発揮し,それらを融合することによって“もの”を作る。14型液晶パネルは40数人で開発しました。皆がすごく知恵を働かせてくれたので,実現できたのだと思っています。

――新人の時に苦労したことは何ですか。

 あまり苦労はしたことはありません。失敗はたくさんしましたが,会社を辞めたくなるようなこともありませんでした。

 ものづくりが好きかどうか。これは,ものすごく大事なことだと思います。私は,ものづくりが大好きでした。そう感じ始めたのは小学生のことです。自分で作った鉱石ラジオから初めて放送が聞こえたときは,とても感動しました。それから真空管でラジオやテープ・レコーダを作りました。このように,小さい頃から,ものを作るのが好きだったのです。いつも,何か作っていました。大学は物理系に進み,卒業後はシャープに入って好きなことを,もちろん会社の発展に寄与することですが,やり続けてきました。

 シャープに入り,最初は半導体レーザーをやりました。当時は液体窒素(極低温)の中でしか光らなかったのですが,これを室温発信できるようにするのは楽しかった。なぜ冷却する必要があり,なぜ室温になると光らなくなるのか。それを,電子顕微鏡などを使いながら解析し,原因を分析しました。そして,III-V族の半導体をエピタキシャル成長させることによって,室温発信できる半導体レーザーを作りました。その次に取り組んだのが薄膜太陽電池です。少しでも効率よく電気を発生させるための素子構造を,仲間と一緒に追求しました。太陽電池は今,環境エネルギーの時代の中で脚光を浴びています。太陽電池の次は,液晶ディスプレイの開発に取り組みました。半導体レーザーのベースはLEDですので,振り返ってみるとLED,太陽電池,液晶という,現在の“グリーン・デバイス”の開発とその事業化をすべてやらせてもらったわけです。技術者冥利に尽きます。