子供の夏休みももう半ば。8月の中旬にかけては、ふるさとに帰省する人も多いだろう。おじいちゃん、おばあちゃんと一緒の団欒に欠かせないのがデザート。お店にはアイスクリームやプリンのいろいろな商品が並ぶが、最近は「お母さんが小さい頃も、これを食べてたね」とみんなが笑う懐かしの定番デザートが復権している。

ハウス食品の「フルーチェ」。大人には牛乳を混ぜるだけの手間すら敬遠する人もいたが、「作る楽しみ」は子供をつかむ

 牛乳と混ぜるだけ。こんなフレーズを聞けば、多くの人が「あれでしょ」と思い出す定番デザートがある。ハウス食品の「フルーチェ」。商品に含まれる「ペクチン」と呼ぶ物質と牛乳のカルシウムが反応して固まる仕組みで、特別な調理が必要ないため子供でも手軽に作ることができる。1976年に登場したロングセラー商品だ。

画期的な「カスタード」味

 だが、最近の販売は苦戦していた。かつてのヒット商品も今や33歳。同社が調査したところ、20代の主婦には フルーチェを作ったことがない という人がかなりいた。誰もが知っているが、食べたことはないという商品になる可能性すらあった。

 だが、未曾有の世界景気後退が古株デザートに思わぬ追い風をもたらした。お店で冷やして売られるプリンは子供が3人いれば、3個必要。1個200円なら、おやつ代もばかにならない。フルーチェは4人分を作れる1箱が180円(税抜き)。このお得感が、節約に走る主婦に受けているという。

 ハウス食品も追い風に乗ろうと懸命だ。2月にフルーチェのシリーズでパッケージを一新し、同時に「カスタード風味のリンゴ」味を発売した。 イチゴ といった果物だけで味を揃えていたフルーチェで、カスタード味は「画期的」(ハウス食品調味食品部の白樫雄一・販売企画マネージャー)。「大人には甘すぎるというぐらいの味が、子供にはちょうどいい」(同)との考えから、新たな味覚に取り組んだ。

 追い風に企業努力が加わり、箱タイプのフルーチェの売り上げは出荷ベースで2009年1~5月に前年同期比15%増。しかも実売の単価が1個につき2円も上がった。極端な安売りをすることなく、母親の心をつかんだ。

 ついつい口にしてしまう夏のアイスクリーム。こちらも売れ筋は懐かしの商品だ。

 江崎グリコの「アイスの実」。丸い一口サイズのアイスで、こちらも発売は1986年と古い。12個入りの1袋で120円(税抜き)と安価で、最近は「しばらく買っていなかったという顧客が戻ってきた」(同社)という。

2倍超の売れ行き

江崎グリコの「アイスの実」。パウチ容器にして、持ち運びも簡単になった

 今年3月30日に商品を一新し、パウチ容器を採用。4~6月の出荷金額は前年同期比2.7倍と、猛烈に売れた。

 「懐かしい」とまでは言えないが、2003年に発売された森永乳業の「MOW(モウ)」も売れている。懐かしさを感じるカップタイプは1個120円(税抜き)。期間限定の「巨峰」味などが好評で、4~6月の出荷金額は前年同期比2.4倍となった。不況下にあって「家でゆっくり食べられるカップアイスが見直されている」(同社)という。

 「昔も食べたけど、今はこんな味があるんだねえ」。懐かしのデザートの復権はむしろ「おじいちゃん、おばあちゃん」の人気が裏側にあるのかもしれない。